かっぱ人魚はざんねん

「人魚姫つーたら、やっぱ上半分は美人なのが定番じゃん? それが河童と合体したらぜんぶ台無しだよ! 頭の皿とか!」

「創作妖怪として珍しくない?」

「どう考えても良さを殺し合ってるわ!! だから誰も描かないんだわ!!」

「海の中にする〜つうたのあんたよ」

「カッパ人魚姫! 頭に皿あって緑色の肌でなんか小汚くて目がギョロついてて黄色くて痩せっぱちで腹はでてる! 最悪だろどう想像しても!?」

「独創性あると思うのになー」

「いいからビジュアルを想像してみろ、ビジュアルどう考えてもホラーよ!!」

かっぱ寿司にて、美大生はスマホのメモ画面を広げながら額を突き合わせていた。

片方がけんけんごうごう。もう片方は泰然として余裕があって、傍から見れば、旗色は彼女にあった。内容を知らなければ。

泰然と、ゆうゆうと、彼女。

イクラときゅうりの軍艦巻きをくちにしながら、もごもご。

「元から人魚姫ってホラー要素ない? そこをほら、拡大解釈して、出っ腹のミドリ人魚姫で魚の下半身があってカッパは痩せてるから魚部分もカラカラなのよ。なんかこう、地獄の人魚姫〜、みたいな?」

「ホラー創作会じゃねんだわ!!」

きゅうりの巻物をつまみ、相方は叫ぶ。

彼と彼女の共通点は、きゅうりが大好き。さっきからきゅうり入りの注文ばかり。だが、こればかりは、シェアもカブリもお断りとみえた。相方が。

かっぱ人魚姫の行方や、いかに。

「地獄の餓鬼の人魚姫化かよ!?」

「出っ腹にこだわるねー、そんないや?」

「人魚姫の出っ腹だけは夢が総崩れするわ!! イヤだわ!!」

……かっぱ人魚姫、消滅しそうである。


END.

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