鏡の向こう側から、

彼女は半分、鏡の向こう側から来たようなヒトだ。
話は半分くらい通じて、見た目は半人前くらいに美しい。なんだか、脳に障害があるという、うわさ。

常世離れしている彼女はいつしか人魚姫とか乙姫とか呼ばれるようになった。
酷い話かもしれない。しかし納得できた。

同じなのに同じではない、そんな気がひどくするのだ。彼女を見ていると。鏡にうつる自分は自分だけど自分ではない、ような。

気がつけば、彼女を嫌うようになっていた。
醜い差別意識があること、気づかせてくれたせいだろう。人魚姫、あるいは乙姫は、ふしぎな眼力のある女の子だった。あの眼は気にくわなかった。半人前なのに超常的ですべてを見透かしている瞳におもえた。

そんな彼女が、事故に遭った。
松葉杖をついて登校する。ああ、人間だったんだ。当たり前にいまさら気づき、頭の後ろがヒリヒリして後悔と恥ずかしさに襲われた。自分は一体、何を恐れていたんだろう。

その日、はじめて彼女にきちんと挨拶ができた。
まず最初の一歩だ。この転入生と、ともだちになるために。

「おはよう、実道ハルカさん」



END.

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