今日から一歩目

人魚姫は、今日から一歩目を踏むことにした。人間にしてもらえて、代わりに艷やかな声を奪われて、しかし当てにしていた王子様はそっぽを向いて背中を見せた。

その世界の人魚姫は、泡にはならなかった。

ただ、一歩目を踏んだ。
国を出る、一歩目を。

王子様がいるからと、ずっとこもっていた国を出て。
外の世界に向かって。

彼女は、彼女だけは、一歩目を踏み出した。

それは、とても、尊いことなのだった。


END.

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