解体ラブスト-ショート-19

「おかえり沙耶ちゃん」

なんだか急に目が覚めた気分。

自宅のボロアパートに帰っただけ、なのに、ながい夢が明けたよう。夢が終わったよう。それなのに、始まる、よう。

(……ぜんっっっっぜん馴れないッてか不法侵入の夫……なにがどうしてこんなこと)

結婚、したのだった。

まだ一週間もしてない。

ただ、帰るたびにハッとする。結婚したのだった。夫がいる。書類上は。そのつもりが、本当にこの男性が押しかけてくるもんだから、しかも自宅に、おかげで帰るたんびにソレを思い出す。

結婚、したんだった。
夫がいる。

私の、夫。
このオンボロアパートにいっしょに住んでいる。カップルみたい。恋人みたい。

いや、よく知らない、赤の他人、でも。でも私は言われたからには答えた。

「……ただいまです」

「うん」

しーさんは、気安く笑う人だ。

その笑顔。ほほえみ。大安売りでありがたみもないけど、でも笑ってくれる。

笑って、おかえりとただいまを言うだけの、生活。
私にも起こることだった。いつかは、とは、夢見ていたけれど。

……こんな叶い方は、予定外、思いもしなかった。

「…………なに? 沙耶ちゃん」

「いえ不法侵入がまだ続いているなと」

「そう言いつつ頼んだ夕飯の買い出しはやってくれる沙耶ちゃん〜〜♥♥♥」

(なんなのこれ!)


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。