人魚解体のメモ図案

人魚の肉と血は不老不死の効能をもつと云われる。では、骨は? 骨はどうなるんだろう、ある絵本作家は動物をモチーフにした著作を仕上げたのちに疑った。

動物なら、牛なら肉も皮も使う。鶏も軟骨などコリコリして人気がある部位だ。豚足もわりかしメジャーだ。そして人魚だ。人魚が不老不死をもたらす食品としら、どの部位までが可食域だろう?

まず、皮は食べられそうだ。魚の一種なら炙り焼きしてパリパリにしてジューシィになるはずだ。ダメでも、ワニの皮かばんぐらいの再利用はできるだろう。なんせ寿命も無いとされる人魚だから皮も丈夫でとうぜんだ。

次に、ならば骨は?

軟骨は、しかし鶏や豚ならまだしも、難しいかも知れない。おそらく人魚は非常に頑丈だろうから、軟骨でもバキバキした感じだろう。食べられそうもない。しかし、貴重な人魚の骨だ。なにかに使わなければ。

(……そうだ。出し汁にしよう!)

パソコンと接続した液タブ画面に、大鍋と、そこに投入してある人骨を描く。上身は人間だから、頭蓋骨があって、あばら骨なんかもあった。魚の骨の部分は砕いて粉末にして飲み薬にするのはどうだろうか?

人魚の全身図と、→で接続した、各料理やら大鍋やら粉末やら。描き終えると絵本作家はううーんと眉間にシワを寄せた。

夢中で描いたはいいものの、コレは……。

プルルルル。

「あ、もしもし編集さん。新作のネタができたんですけど、見てもらっていいですか? ああ、えっと、まぁ空想解体新書? みたいな……」

『……殺人鬼の絵本ですか? これ?』

「ちがいます」

画面共有で画を見てもらいながら作家が、心配する。心配は的中だ。

問答無用、没にされた。


END.

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