母に「死んでやる」と言わせた事

「もういい、死んでやる」

ある晩、母は僕たち姉弟3人に向かってそう叫んだ。


あれはいつ頃だったか、3人姉弟の真ん中である僕が、小学校低・中学年ぐらいの時だったと思う。

今でもたまに、母にそのような言葉を言わせてしまったことを後悔する。

きっかけは些細なことで、単純に母が

「パパとママどっちが好き?」という質問を僕たちにしたことだった。

この質問は皆さんも経験があるだろうが、答えを出しかねる悪問である。

受験で出題されたら、解かずに飛ばすタイプ。


それはさておき、やはり子供であったし母と父どちらが好きかなんて比べようもなく、どちらも同等だったと僕は思っていた。

しかし、子供ながらに面と向かってどちらも好きだと、恥ずかしくて言えず「パパ」と答えてしまった気持ちは今でも思いだすことが出来る。

自分ひとりだけが「パパ」と答えていたら問題はなかっただろうが、宜べなるかな、姉と妹も同じ気持ちだったらしく、二人も「パパ」と答えてしまっていた。


子供3人にパパの方が好きと面と向かって言われた母は、どういう気持ちだったのだろう。例えそれが本心ではないと頭の中では理解していたとしても、やっぱりとても悲しいかな。だからあんな言葉を吐いてしまったんだ。


タイムマシンがあるなら、戻ってやり直したい程度には悔いている。今は大人だし、機会があった時にはしっかり感謝の念を伝えよう。

そう思ってはいるが、やはり面と向かって言うのは未だに恥ずかしさを拭いきれない、未熟な人間が僕なのであった。

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