『宮下愛は火属性』第4集を読んで豚のような悲鳴をあげた
鐘嵐珠ちゃんがあまりにも気高い。
三船薫子という己の理想に向かって、己に競技属性への適性がないことを誰よりも知りつつも、まっすぐに、ひたむきに邁進していく姿が我々読者の、中須かすみの、そしてミア・テイラーの心を打った。
これこそが、純真無垢な鐘嵐珠ちゃんこそがあまりにも救いのない火属性における救われるべき人間、そして読者の縋るべき希望。
――そう信じていたのに。
感想を書き終えたら一旦ストリートファイターで遊んで現実逃避しようと思います。(追記:しました)つらすぎる……。
コンディションは最悪そのものですが、岩しろ先生著『宮下愛は火属性』第4集についてまたつらつら語っていこうと思います。
嵐珠ちゃん…………。
※だいぶ脳味噌をやられてしまったので作中で語られてたはずのことを予想し始めたり、口語体と文語体が混在したり、とんちんかんな事を記述するおそれがいつも以上に存在しますが、手遅れなんだなあ。可哀想に、と生暖かい目で見守って頂けると幸いです。
◇ひめのこうじ……
実は本編を読み始める以前に作者さんがTwitterに載せてたサンプルを少し読んでいたことがあって、それが今回の歩夢ちゃんと姫乃の空港のシーンでした。
だから姫乃が登場すること自体は知っていたのですが、まさかこんな味付け、つまりは怨敵として出てくるとは思いませんでしたね。
侑ちゃんは優しい、そして強い。
前述のように姫乃は怨敵のような存在。そんな相手にこの言葉を投げかけられる、深い優しさ。怨敵でありながらも同じ無属性としての痛みも知っている。だからこその優しさは慈愛に満ちたもので、同時にとても痛々しくもある。
姫乃に向けた果林さんのセリフ。
ここに至るまでの話の中で、平和を目指すには痛みが、犠牲が必要だということは嫌だというほど語られている。虹の騒乱を起こした侑ちゃん然り、シキシマに乗っていた仲間を千人手に掛けた彼方さん然り、だ。
だからこそ必然的にこの言葉には力が宿る。「誰も見捨てない人」は間違いなく絶対的な強者で、現実の見えていない理想主義者だろう。
かなり印象的な彼方さんと果林ちゃんのシーン。
少なくとも彼方さんにとっての人間らしさとは『主観主義』、自分のやりたいようにやること。他者から観測した時には自己中心的にしか見えないそれが『人間らしさ』であるならば、人間らしさを追求することは『調和』とは最もかけ離れた行為な気がします。あれ?彼方さん??
島の人たちの『恩人』である姫乃が「私は絶対に地獄に落ちない」って言っているところがあるけど、歩夢事件から完全に目を背けて被害者としてのセリフなのでこれもまた人間らしさだよなぁ。悪い意味で。
そんなことを思っていたからこそ、この独白には結構思うところがありました。全員が犯罪者なら、平和への舵取りは誰が行うべきなのか。
全員で行うべき?そんなことできる?
うーん……。
◇愛さん
正直、以前のかすみんが愛さん(もしくは愛の会)の思想に染まりかけていた時の思考が愛さんの思考をほぼトレースしていたと思っていたのですが、そんなことはなかったぜ。
愛さんの思考が本当にわかりません。
並び立つ最強二人の激アツ展開をまさか消し飛ばされるくらいの混沌を提供されるとは思わなかった……。
わかんないよ わかんないよ
わかんないね…………。
◇カーチェイス
「っぶないなあ! ワイスピじゃねえっての!!」
◇月光 / 陽光
#36『月光』を読んだ時に「ああ、今回はこの話についての感想がメインになるんだろうなぁ」と思っていた。
衝撃度合いで言えば #37『線分定義』と比べるまでもないのだけれど、やはり感想のメインはここになる。
率直な話、ミアと璃奈ちゃんのシーンを読んだときに泣いてしまった。ここまで言えばどこの話かは分かるだろうし、引用しようかと思ったけどあのシーン一体が織り成す美しさがあるのでやめておく。
「無属だから」という理由で否定され続け、果ては世の中から抹消されてしまった「テイラー家の音楽」という誇り、ミアの世界。
その世界を賞賛の言葉でもって受け入れてくれた璃奈ちゃんに対するミアの情動は計り知れない。
普通こういう時って社交辞令だと思う(のは私が汚い人間だからだろうか)ものだけど、それでもミアの心を打ったのはそれくらい璃奈ちゃんの言葉がまっすぐだったか、社交辞令だと思う余裕もないくらい、その言葉という水を求めてミアがカラカラに干からびていたかのどちらかだと思う。
曲がりなりにも創作をしている身としては創作物に対して「込めた想いを理解してほしい」という気持ちと「どうせ欠片も理解されないだろう」という気持ちが存在する。前者は欲求、後者は自己防衛。
だからこそ、ミアの気持ちを分かったような気になって一緒に泣いてしまう。それはいちばん欲しい物だから。
だから分かった気になって、このセリフでさらに泣いた。
前巻の感想で「人類滅亡以外に平和は訪れない」って書いた気がするんだけど、この話を読んで「誰かに認めてもらうこと」は平和に準ずるんじゃないかなと思いました。
一人だと自分の世界を観測出来ないけど、相手が居れば、相手に認めてもらうことで世界は構築できる。今回でいえばミアちゃんの音楽を認めた璃奈ちゃん。それは一つの調和で、平和なのかもしれない。
だいぶ上手くいえないけど、このシーンに『平和』のヒントを見た気がする。
あとタイトルの『月光』。
これが割と本気で謎だった。持っているヨルシカ知識的に月光は「底の抜けた柄杓で愛を掬う」だから。
と思ってたんですが、Pixiv連載版だと『月光』は『月光』『陽光』の分作なんですよね。つまるところ月光→璃奈ちゃん、陽光→愛さんって事でしょう。というか本文中に書いてあった気もする。
それを踏まえると謎だったミアのコードネーム『ゲッコウ』がなかなかにクソ重感情でニコニコしますね。陽光である愛さんと薫子さんに照らされた璃奈ちゃんと嵐珠ちゃん。そしてその二人に照らされたミア。
◇線分定義
トーキューの難民校は狙わないよ!
僕らは友達だもんね!!!
ちっくしょおおおおおおお!!!!!
いや、因果応報ではある。
ミアちゃんはそれだけの事をした。
ただあまりにも報いがエグすぎる……ここはゴールデンカムイじゃないんですよ!??
私はマジで嵐珠ちゃんに希望を見出していたので本当に辛い。半日経っても未だに辛い。
善人が苦しむのを見るのがいちばんつらい。
前回の感想で「鐘嵐珠ちゃんスーツを着てくれ」みたいなこと言ってたけど、ここ読んでて「スーツ着るな!嵐珠ちゃん!まじで!スーツ着るな!!!」って心の中で叫んでました。
しおちゃんに至ってはもう何も言えないよ……。
彼女たちがどんな選択をするのか楽しみです、って毎回言ってきたけど、もはやここまできたらあとは見守るのみ……。
火属性完結後に、機会があればお会いしましょう。
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