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『うすむらさき』感想 〜"面倒臭さ"という良さ〜

サークルHave bean、まめびーんさん作のようりこ小説『うすむらさき』を読み終えました。

私が読みたかった話を読ませてくれた作品、っていうのが簡潔かつ率直な感想です。もっとこの人の作品読みてえ……と思っていたところにラストの3行があったのでこれが嬉しくないわけがなく。うれしい!

あとがきは難解すぎて解読不能でした。


(以下、『うすむらさき』本編の話をします)

◆めんどうくさい

本作本文1ページ目を読んで私は思いました。
あ、これ面白いやつだ、と。

微訂正。厳密には数ページを読んでからの判断だったかもしれない。なんにせよ妙に肌に合うというか、スッと物語に入っていけると確信。こういう作品に出会えると嬉しくなりますね。

さて今作のようりこは両片思いです。側から見てて「はよくっつけや」とキレられる例のアレですね。大好物です。

とはいえ冒頭では桜内さん→曜ちゃんっぽくは見えるんですが、曜ちゃんの気持ちの開示に関しては少しだけ引っ張っている感じがして「お前はどうなんだ渡辺……」とソワソワしながら神視点で楽しめました。

ちなみに私は恋愛モノでいい感じの2人の間に割って入るライバルキャラみたいなやつが心底嫌いなんですが、今作でもそんなキャラが登場します。渡辺曜が作り出した幻影。

幻影。
実態を伴わないイマジナリーエネミーである。
それ故に、いつもなら「この**はよぉ!」ってキレ散らかすところがそれが出来ない。なぜならそれは渡辺曜の作り出した幻影だから。ゴーストタイプにかくとうタイプのわざは効かないのである。

ともすれば、矛先を収めるしかない。
うじうじしている曜ちゃんの気持ちはまぁわかる。かなりわかる。他人の思ってることなんてブラックボックスであり、口に出していることすらイコール本心とは限らないのだから。それに加えて相手が想い人ともなれば「仕方ないよね」というほかない。

腹を括って踏み込む必要があるわけだけど、そこは渡辺曜である。まぁ無理なわけで。桜内さんのほうに至っては腹を括って一歩引いているわけで。

こ、この2人詰んでるよぉ〜!(高海千歌)

このへんで、もにょもにょとした感情を抱くのは狙い通りなんだろうなー。

「大丈夫……?」
「ヨーソロー!」
ちょっと訝しんだような顔で、ヨーソローならいいか、と刻んだ玉ねぎをフライパンで炒め始めた。ありがとうヨーソロー。いつもお世話になってます。

うすむらさき 151ページ

このくだりおもしろかったです。


◆3角から上がっていった!!

ほいで、そんなもにょもにょを抱いたまま突入する4章。最高でした。

月ちゃんと善子ちゃんが2人に対して辟易とするシーンなんですけどここが読者である私と完璧にリンクしていて「そう、そうなんだよ!!!」とトリキに居合わせている気分でした。

結構コミカルに描かれてるシーンなのもあってギアを上げてきたなといった印象のシーン。

ちなみに恋愛相談を受けた月ちゃんと善子ちゃんの2人が飲み屋で意気投合してくっつくような展開がヘキだったりします。

そして時は流れて大会当日。
描写が怖い。万が一は無いと思うけど、前作が前作なのでやっぱり万が一があるかもしれない。

ナイフで脅されるの怖いけど、ナイフで人を切りつけたことがある人とそうでない人が振りかざすナイフだと全然怖さが変わってくるよなぁと痛感したシーンでした。

死ぬな、半身不随になるな渡辺……!!

いやもう普通に棄権してくれよってこのシーンで意地を見せた渡辺曜は格好良くて、やっぱり不器用なんだよなぁと思う。

「やだ」
その先を言わせない。言わせてたまるか。

うすむらさき 228ページ

河川敷の格好悪くて格好いい桜内さんの告白はさすがに泣いた。カタルシスがやばかった。おめでとう、おめでとう、ようりこちゃん……!!

ダメなとこも含めて好きってもうそれは愛なんだよね。好きをすっ飛ばして愛してる。

2人の不和を最初に生み出したイルカのキーホルダーくんもこういう展開を見せてくれるならもう無罪釈放だよ……。

◆おわりに

"両片思い"に求めているものをしっかりと提供してくれた今作、非常に楽しんで読ませて頂きました。サンシャインの二次創作に触れるのは久々なんですがやっぱ面白いなぁ、アニメ見返そうかなってなったのもよかったです。

アニメ、びゅうおの鞠莉さんが超絶ウルトラファインプレーだったのも改めて理解した……渡辺……

ラストで月ちゃんと善子ちゃんサイドの話で続編を書いてくれるっぽい記述を見て、跳ね起きてガッツポーズをするなどしたのですが普通に楽しみです!

とはいえ、まめびーんさんの次走は蓮っぽいので予習しておかなきゃなと思ってます。めぐパイのぺぇが大きいらしいことしか知識が無い……。

まめびーんさんのはイベント初参加同期ということもあり対抗心を燃やしてたんですけど、こういうふうに完璧な正攻法で黙らされてしまうとまじで次のイベントどうするかなという気持ちでいっぱいになりますね……。

さておき次回作も楽しみにしてます。
作者買い安定!

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