気づかないまま傷つく

息子はきのう、学校が休みで、仲間と校庭に集まってまるまる一日ラグビーをしていたのだそうだ。

話題のスポーツをすぐやるの、あまりにも小学生らしすぎる。空き地で野球をやるみたいに真似事とはいえラグビーで一日を楽しむとは、時事ネタエンジョイ力に感心した。

体の良くわからない部分が筋肉痛だといいながら息子は学校へいき、娘も出かけた。娘は筆箱を忘れそうになってギリギリ私が気づいて渡したが、連絡帳を忘れていった。

私も仕事へ。そして終えて帰る。

晩は鳥肉を寿司酢で照り焼きにしようとフライパンで肉を焼きつけてからジャーと寿司酢を入れてふたをして、しばらくして味見をしたら、入れたのは寿司酢ではなく酢だった。すっぺー!

慌ててしょう油と砂糖をじゃぶじゃぶ加えて事なきを得たが、酢の酸っぱさを改めて思い知り背筋が伸びたのだった。

無事に酸っぱくない肉を食べた後、いじめ問題への取り組みについて話し合うという宿題が息子も娘も学校から出ているということで、おおそうかと少し話した。

息子も娘もいじめは見たことがないそうだ。

私は話しながら、いじめは気づかないまま傷つくパターンがあるのを思い出した。

私はいまの娘と同じ小学校3年生のそれまで友達だった人たちから急ないじめにあったが、なんと自分がいじめられていると気付かなかったのだ。なんだか突然普段と違うことが起こって困って学校に行けなくなった。

度を越えて世間を知らない子どもだったので当時まだ「いじめ」という言葉を知らなかったというのが原因の大きな部分だとは思う。

でも、さみしさやみじめさを実感しながらも、これが被害を訴えてもいい、声を上げることが許される、「いじめ」というやばい状況なんだと脳でもって分類しきれない状態というのはわりあい普通にあることなんじゃないか。

学生の頃、チェーンの喫茶店でアルバイトをしていて、一番仕事のできる男の子が店主と先輩のバイトに、多分あれはいじめられていた。バイトをやめて後になってからそれにはっと気づいて後悔した。

本人とは交流があったが、彼も辞めるとか声を上げるとかする様子はなく、いちど、あの人たち君に失礼で嫌だねと言ったら、そうなんだよねと言っていた。我慢していたのだ。

子どもたちはいじめを見たことがない、でも見えていないところ起こってるんだろう! ということではまったく無くて、ただ、いじめというのは「起こっている!」的に劇的に起きるのではなくぼんやりとした中で、なんかやだなあでも友達だしなあ、みたいな感じで起きることがあると話した。それくらいゴリゴリに陰で湿なものだ。

娘が風呂に入って行って、しばらくして様子を見に行くと脱衣所で座り込んでいて驚いた。大丈夫か!? ととなりにしゃがむと、足の指のまたを見ている。

かゆいのだそうだ。おお…気分が悪くなったのではと思ったがよかった。見てみると靴ずれのようになっていたので薬を塗った。

息子も背中をかゆがるので薬を塗った。

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