正月にはリステリンを買う

息子と私とで餅を食べ、娘も起こして餅を食わせた。毎年正月の3日目は実家の家族で集まる。昼前に到着するように、お祝いの豆を持ち出かけた。

きょうだいが多い家で育った。長子は私で下に妹が二人と弟も二人いる。それぞれに子どもを持つなどして全員が集まるととても人が多い。実家の居間でぎゅうぎゅうになって年少の者から順にお屠蘇を飲み、記念写真を撮って乾杯した。

お節とチンジャオロースとハンバーグとローストビーフなど母がいろいろ準備してくれて本当にすごいことだな。私は料理があまり得意ではないのでこいったものを目の当たりにすると打ち震える。あれこれ食べて飲んで本当にありがたい。

ひとしきり宴会が落ち着き、箱根駅伝も見終えて子どもらが公園に遊びに行く。すると私はだんだんリステリンのことが気になってくる。

実家の近くには大きな商店街がありドラッグストアもたくさん並ぶ。なかに、リステリンのとても安い店がある。

それでは私はそろそろリステリンを買いに行くから、といって立ち上がると上の妹に「ちこちゃん(私は実家でそう呼ばれています)はいつも正月にリステリン買いに行くよね」と言われた。

正月だけではなく日頃からリステリンの底値に注目している母が「一番安い店は今日は休みなんじゃないかな」と言った。下の妹が調べて電話をかけてくれたがつながらない。忙しいから出られないのかもしれないねと希望をつなぎ、どうせひまなのでやはりでかけることにした。

あの店がもし開いているとしたらリステリンはおひとり様一つだよ、と、下の妹もついてきてくれた。

残念ながらリステリン最安の店はやはり正月休みであった。「念のためほかの店の価格を調べておこう」と妹と言い合い近い2軒をまわる。

すると1軒がこれはという値段であった。しかも「親子」だ。

リステリンには「親子」という概念がある。通常大きなボトルで販売されているリステリンに、小ボトルがサービスでセットされた状態だ。

これは買いだな。3セット買った。妹が運搬を手伝ってくれた。

帰ってだらだら酒を飲む人々に値段を伝えると母がキッとして「あたしの分は!?」というので1セット売った。

子どもらは引き続き近所の公園にいるようだ。おいて行かれた一番年下の3歳の姪っ子が私も行きたいというので連れて行った。

一緒に外を歩くと、こんなに小さい子どもがしっかりした足取りで歩くものだったかと驚く。よほど下をみないと視界に入らないほどの小ささだ。

「とうふ」と言った。向こうの看板に「とうふ」と書いてある。そうだね、とうふだね。「とうふすき」「私もとうふ好きだよ。ほかにはなにが好き?」「ブロッコリー」ふふふ。

それから空を指さして「あるね」というので何かと思うと月だった。「ここにもあるし、おうちのちかくにもあるんだよ」「ああ、そうだよね、どこにでもあるから不思議だよね」「歩くとうごくよ」「そうそう、ついてくるんだよね」ふふふふふ。

公園に行った。でもすぐ「おしっこ」というので来た道を戻った。

夕方になりみんな帰っていった。私たちも帰った。

満腹なのかなんなのかよくわからず、できあいのピザを買ってきて焼いたら子どもたちは喜んで食べた。

娘は年末から楽しみにしていたラグビーの日本代表選手が出るバラエティを観てうれしそうだ。そのあともそのままなんとなくテレビを観た。

明日は娘の中耳炎を診てもらいに正月早くから開けている病院に行く。息子も咳が出ており塾の前に同じ病院に連れて行ったほうがよさそうだ。病院は混むだろうか。初診でかかるし、どんな先生だろう。心配しながら寝た。

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