今日の15時ごろすごかった

頭で思い描く立ち食いそばはいつも怖かった。

駅そばによく行くのだが、お客全員がトレイにそばを乗せて自席を選びそこまで持ち運んで、食べた後また返却口まで持っていくという一連の流れは驚くべきものだと思う。

なぜ、誰もそばつゆをこぼさないのか(多少はたぷんたぷんしてこぼすこともあるかもしれないが、ばっしゃんとはこぼさない)。考えると恐ろしい。

昼に駅でコロッケそばを食べた。

受け取り口で受け取ってから、トレイを片手で持ってグラスに水をそそいでトレイに乗せて席まで行って食べて、返却口にもどして店を出た。

出たところであっ! と思った。

ぜんぜん怖くない……!

想像上の立ち食いそばはとても怖いが、現実の立ち食いそばは全く怖くない(怖がる気持ちを持っていない)ということに気づいたのだ。

なにせ、たっぷりと入っているコロッケそばをトレイに乗せて、乗せえたまま(!!!!)片手を話してグラスに水を注いだのだ今さっきわたしは。

つまり人間のバランス感覚というものは、私が思った以上に発達しているのだ。

だから、立ち食いそばは大丈夫なのだ。

そういうことだったのか……という興奮とともに事務所に戻り仕事を終えた。

帰るとしばらくして息子も帰ってきた。作文塾でなにかのノベルティのペンセットをもらったらしい。丁寧に箱に入っている。

取り出して箱をほっぽっているので、捨てておいてよと頼むと「これ妹が欲しがるだろう」という。そうかな。「だってあいつ箱女だから」

娘が帰ってきた。これいる? と息子が箱を渡すと、いる。と受け取っていた。箱女なのか。

箱女の娘と手をつないでスーパーへ。遠足のおやつを買う約束をしている。

外は夜だった。街灯のついた道から街灯のない小道に入るとまるで暗く、娘は私たちの影が消えたのを見てマントの中に入ったようだと言った。

娘はグミとラムネを買った。

帰り、娘が先を走り、走った先で「優勝しました!」というので、私もかけていって「放送席、放送席、優勝選手のインタビューをお伝えします」「すごい走りでした」「今のお気持ち、誰に伝えたいですか」「応援の方々へ一言お願いします」などと優勝インタビューをした。 実は私は優勝インタビューがすごく得意なのだ。

娘はひととおり答えていたが、答えたあとめちゃめちゃに照れていた。

照れながら「へへへへへ~」といって体をぶつけてくるので「へっへっへ~」とぶつけ返した。

そのあとまたぱーっと走っていき「今、なにしかしてなかったでしょうか!」と聞くので、どういうことかわからないでいると「白いところしか踏んでいませんでした~」といってまた家にかけてった。

帰って晩ご飯。いただきもののお赤飯を食べた。お祝いでもないのに食べるお赤飯大好きだ。

食後、息子が「そういえば今日の3時ごろすごくなかった?」といった。えっ、なにが? と聞くと「ものすごくすがすがしくて気持ちがよかった」「今までに感じたことがないくらい」と。

ふふふ。それが秋です。

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