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新型コロナ流行で大打撃…明治元年創業の老舗菓子店がなぜカレーパンを?

2022年10月の「地元を愛す。」プレゼントの賞品にセレクトしたのは、明治元年創業の老舗菓子店・別子飴本舗(新居浜市郷)の「カリットカリ 」。コロナ禍のピンチを逆手にとって生まれた“お菓子屋のカレーパン”は、みるみる話題の商品に。七代目社長の越智秀司さんにお話を伺いました。


来年創業155周年を迎える別子飴本舗。コロナ禍前は観光バスで工場見学に訪れる客も多かった。


―別子飴本舗さんのカレーパンが、2年連続で「カレーパングランプリ」金賞を受賞したと聞きました。 そもそも、どうして老舗のお菓子屋さんがカレーパンを販売することになったのですか?

(越智秀司さん)
2020年の東京オリンピックに合わせて、里芋をかりんとうにした「ポリポーリ」というオリジナル商品の「もんじゃ焼味」を東京向けに売り出そうと準備をしていたんです。そのために新しい大型フライヤーを導入したのですが、その年の2月に新型コロナウイルス流行の影響で全部キャンセルになってしまいました。使い道がなくなってしまったフライヤーをどうにか活用しようと、かき揚げや唐揚げ、コロッケなど色々と考えたのですが、たまたま工場長がパン職人だったこともあり、うちが経営するうどん店のだしや具材を使ってカレーパンを試作したところ、非常にいいものができたんです。
さらに、私どもの店舗は県道に挟まれた立地で、観光バスを止めるスペースもありますので、ドライブスルーで揚げたてのカレーパンを売ったらどうかという案が出ました。そして2020年5月からカレーパンの販売をスタートさせました。新型コロナの影響でテイクアウトの需要が高まる中、「お菓子屋が作るカレーパン」という珍しさもあって、地元の方に興味を持っていただけました。


「 瀬戸内レモン香るチーズ」はカレーパングランプリ202 2のチーズカレーパン部門で金賞を受賞。


里芋「伊予美人」の親芋を使った甘くないかりんとう「ポリ ポーリ」。東京向けのお土産として展開予定だった「もんじゃ焼味」は、バラエティパックに仲間入りした。


ードライブスルーという発想もおもしろいですね。当時は観光業もストップし、お土産物の売り上げも激減したと思いますが、まさにピンチをチャンスに変えようと生まれた商品が「カレーパン」だったわけですね。

お土産物への打撃は大きかったですね 。観光バスも全く来なくなってしまいました。現在はようやく観光も動き出しましたが、それでもお土産物の売り上げは以前の半分から6割ほど。これはおそらく元には戻らないと思います。東京向けの商品がキャンセルになってからカレーパンを販売するまでの動きは、我ながら早かったと思います。新型コロナがなければ、カレーパンは絶対売っていないと思うんです。この方向性が正しいのかどうかはもう少ししないとわかりませんが、今は楽しくおもしろく挑戦しています。今年の3月からは店頭での販売だけでなく、冷凍カレーパン「カリットカリー 」としてインターネットなどでの販売も始めました。

―そのカレーパンについて、味の特徴やこだわりなど詳しく教えてください。

まず、パンの生地には愛媛県産のヤマノイモ「やまじ丸」を練り込んで、もちもちの食感に仕上げています。カレーには私どもの店のうどんの出汁を使い、北条産の玉ねぎなど、なべ焼きうどんの具をそのままカレーにも使用しています。その他、カレーパンの中の具材として、西予市城川町産のウインナー、宇和島市津島町の手押しじゃこ天など、愛媛の素材にこだわっています。カレーパンで地域を元気にしたいという思いで作っています。

―日本カレーパン協会主催の「カレーパングランプリ」に出品して、2年連続で金賞を受賞されたそうですね。

昨年は初挑戦だったのですが、バラエティ部門の「じゃこ天入り」と、西日本揚げカレーパン部門の「半熟たまご入り」がそれぞれ金賞、今年は「 瀬戸内レモン香るチーズ」という商品がチーズカレーパン部門で金賞をいただきました。来年は 愛媛のブランド豚「甘とろ豚」のカツカレーパンで最高金賞を狙います!正直なところ「飴屋なんだから別子飴を売らんといかんだろう」と言われることもあるのですが、今はカレーパンに注力したいですね。「飴屋が作るカレーパン」ということで想像力が膨らみますし、いろんなアイデアを形にしていきたいと考えています。急速冷凍の設備を今年中に増設する予定なので、準備が整えば冷凍カレーパンの販路を拡大してく予定です。


看板商品の「別子飴」は創業当時から変わらぬ製法。レトロなパッ ケージがかわいい。


―来年は創業 155 周年ということですが、新居浜で長く愛される菓子店として、今後どんな歩みを進めたいとお考えですか。

私どもは「別子」という地域の名前が付いた飴を長年変わらぬ製法で作り、商品のパッケージのデザインでも別子銅山や太鼓祭りなど、この地域の歴史を伝えてきました。ですから「別子飴」については30代後半より上の年代の人は良く知っていただいていますが、それより若い人になると認知度はやや低くなります。来年は創業155周年ということもありますので、別子
飴のリニューアルを考えています。新しいフレーバーを増やすのか、詳細はこれからですが、若い人にも受け入れられる新しい別子飴を目指したいと思っています。
私はこの会社を継いで約30年になりますが、長いことを商売する中でこの新型コロナが一番しんどかったですね。この状況がいつまで続くかわかりませんが、今は社内でいろんなアイデアを出し合い、チャレンジ精神でとりあえずやってみる。そして新型コロナ収束後には、地元の人をはじめ多くのお客さんい喜んでもらえるよう、しっかり準備をしておきたいと考えています。



株式会社 別子飴本舗  代表取締役社長  越智秀司さん



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