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世界で一番をみた日 サイトウキネンフェスティバル リハーサル見学②

どうも、こんにちは。
【株式会社自分の履歴書】では、僕の過去について振り返ろうと思います。僕の経験を書いていくことで、誰かの人生が少しでも良くなったらいいな、なんて思っています。

今から約1年前、一人の音楽家が急逝しました。その人は、高校時代から僕の師匠・メンターとして僕に色々なことを教えてくれた人でした。先生(そう呼んでいるので以下、先生)が僕にくれたものは数え切れない程たくさんありますが、その中でも大きな一つがサイトウキネンフェスティバルのリハーサルを見学させてくれたことです。

マーラー 交響曲第5番

午後になると、マーラーの5番のリハーサルが始まりました。午前中のハイドンとはガラッと変わって、編成も大きくなるので舞台上の奏者の人数も増えました。順番はまず5楽章をやってから、1→2→3→4と1からは順番通りに進んでいきます。4楽章は弦楽(管楽器の人は全員休み)なので、管楽器の人は3楽章までで帰れるような順番になっています。

まず5楽章の頭から通していくわけですが、トゥッティ(舞台上の全員が音を出す所)になった瞬間の迫力は忘れられません。正に音の塊が降ってくるような感覚で、和音が立体的すぎて音を聞いていると言うよりはそのハーモニーがある空間にいるようでした。あの迫力はマーラーのような大編成の曲ならではだと思います。

打って変わって、弦楽器が主になる綺麗な部分では音の粒が光りながら空間に漂っているようなサウンドでした。雑味が全くなく、透き通って光っている音の粒がふわふわ空間を漂いながら届いてくるような音でした。

アダージェット

順調にリハーサルは進んで、最後に4楽章のアダージェットになりました。管楽器の人たちはみんな帰って、舞台上には弦楽器だけになりました。ここで、それまで僕たちはホールの後ろの端っこで聞いていたのが、スタッフの方のご厚意で真ん中の特等席に移動させてくれました。今チケットの料金を見てみると、SS席は30000円となっているので本当に贅沢な席でした。

アダージェットは作曲家、マーラーが妻のアルマに向けた手紙として書いた曲で、弦楽ならではの優しいハーモニーと甘いメロディが心に響く名曲です。

ルキノ・ヴィスコンティ監督による1971年の映画『ベニスに死す』(トーマス・マン原作)で使われ、ブームの火付け役を果たしただけでなく、マーラーの音楽の代名詞的存在ともなっている。

Wikipedia

とあるように、映画で起用されたのをきっかけにマーラーを有名にした曲でもあります。

さてリハーサルですが、このリハーサルは「練習」というよりも本番さながらで、最初の方で何度か止めて、返し(特定の部分を何度も練習すること)を少しやった後は最初から最後までノンストップで演奏してくれました。

アダージェットは最後、消えるように音がなくなって終わるのですが、その最後の音が静かに消えた後の静寂は今でも忘れられません。
舞台上の奏者の集中力と客席側(と言ってもほとんど僕たちだけ)の集中力が極限まで高まり、アダージェットの余韻のあとに残された「音のない音」を味わうような、永遠にも感じられるような長い沈黙がホールを支配しました。空間の密度が極限まで高まり、息も出来ないような静寂でした。

マエストロが棒を下ろして少しずつ緊張が解けると、全身に鳥肌が立ち、胸に何かが満たされ、気がつけば必死で拍手していました。

プロフェッショナル

あの日、僕は何を見たんでしょうか。今こうして振り返ってみると、僕が見れたのは一つの道を極めたプロフェッショナル達が力を合わせてとんでもなく美しいものを作り出す所です。文字通りの「世界一」の姿を特等席で味わうことが出来ました。

そんなものを見せられてしまったら、道は違えどやっぱり僕も一流のプロになりたいと思ってしまいます。すごいものを作り出して、お客さんの人生を変えたい。
それが僕の人生の経営方針です。どんなに辛くても今まで頑張ってこられたのは、先生が見せてくれたあの景色があったからです。辛いことを乗り越えて、乗り越えて、乗り越えていけば、きっと美しい世界が待ってるし他の人にもそれを見せることが出来ます。

先生は決して褒めてくれない人でしたが、ちゃんと見ていてくれる人でした。いつか僕が向こうに行った時に、最後くらい認めてもらえるように、これからの人生も生ききりたいと思います。

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