金を払って猫の尻を叩きにいく
子供がスイミングを始めた頃
「クロールで25メートル泳げるようになったら猫カフェに連れて行って欲しい」
と言われていた。
まだ水に顔をつけるのも満足にできない状態。
かなり先の話だなぁと思いながら約束したのだが、「猫カフェ行きたい」の気持ちは凄いもので、目標ができた途端にメキメキと泳力を伸ばし始めた。
「好き」の力は凄い。
顔もろくにつけられなかった子が一年でクロール25mを泳げるようになった。
というわけで、急いで近所の猫カフェをリサーチすることに。
子供も大人も料金一律1時間1,300円、ドリンクは別、餌をあげたい場合は別で追加料金。
滞在時間が5分でも超過したら延長料金。
ノードリンクで1,300円かぁ…。
カフェのサイトに写っている可愛い猫達がキャバ嬢に見えてきた。
小学生は保護者同伴が必須。
ということは2人1時間で2,600円プラスアルファの出費…ウーン、キツイなぁ。
しかし、子供は一年このために頑張ってきた。
この約束を軽い気持ちで反故にしたら一生恨み節を言われるに違いない。
我が子は私に似て執念深い。
という訳で、親子で初めての猫カフェ体験。
私はメイドカフェ的なものをイメージしていた。
猫達が愛想を振りまいて人間に近づいてきて、彼らを撫でながら優雅にカフェオレを飲む。
席に着いてくれた猫にはお好みの餌を与えて一緒にハイポーズ、みたいな。
しかし私達が行った猫カフェはそんなチャラいものではなかった。
そもそも私の猫カフェに対するイメージが間違っていたようだ。
そこは、転居で飼えなくなったり、野良や劣悪な環境から猫達を保護し、ご縁のある家庭との縁組を目的としている、とても実直で真面目な施設だった。
なのでカフェ内の決まり事も猫が基準。
猫から近づいて人間の膝に乗ってくるのはOK。
でも人間が猫を抱き上げるのはNG、
カメラのフラッシュはNG、
人間が大声を出すのもNG、
子供が走り回るのもNG。
猫のことを第一に考えたカフェ、
悪く言えば商売っ気のないカフェとも言えるかもしれない。
さっそく我が子は猫じゃらしのようなオモチャを使って子猫と遊んでいる。
とても嬉しそう、子猫もピョンピョン跳ねて嬉しそう。
高い出費だけれど連れて来てよかった。
さて、私は…眺めているだけで充分かな。
でもお金も払うんだし…と大阪人の血、せっかく来たからには触ってみたい。
キャバクラのように(行ったことないけど)本日部屋にいる猫たちを紹介するボードをチェックする。
どうもお尻をトントン叩いてくれるのが好きな猫が多いようだ。
とりあえず近くに座っている猫がいたのでお尻をトントン叩いてみた。
すると気持ち良いのか私のトントンに合わせて尻尾を振ってくれる。
トントントントン…
(尻尾フリフリフリフリ…)
か…可愛い…。
トントントントン…
(尻尾フリフリフリフリ…)
いい加減、ちょっと手が疲れてきたかも…。
いつまで叩けばいいんだろ…?
でも気持ちよさそうにしてるから止められない。
すると、別のトラ猫がするりと寄ってきて、私に尻を向けて座りだした。
こ、これは…
「ワシの尻も叩いてくれてエエんやで」
と言っている。
ツンデレ?むしろ叩いて欲しいやつ。
多分…いや、きっと…。
右手ではじめから叩いていた黒猫の尻を叩き、左手で新しくやってきたトラ猫の尻を叩く。
トントントントン…
そしたら今度は真ん中の辺りにブチ猫が、これまたこちらに尻を向けて座りだした。
えぇ〜3匹はさすがに無理っすよ…。
と思いつつ律儀に3匹の猫の尻を交互に叩く私。
私は YOSHIKI になったのだろうか…。
新手のドラム練習かのよう。
手がしんどいよ〜…。
でも3匹とも気持ち良さそう…。
これはむしろお時給出していただいても良いのでは…?
そうこうしてる間にお時間となった。
帰り際に「ありがとニャーン」くらい言ってくれるかしら?と思ったが、3匹とも塩対応。
っていうか、気持ちよく寝てる。
それで良い、それで良いんだ…。
達者に暮らせよ。
店員さんは他の猫の世話で忙しそう。
接客はほぼ無かったが、おかげで寄附の気持ちで気持ち良く代金をお支払いできた気もする。
そういえばドリンクも催促されなかったな。
運営は大丈夫なのかな?
子供のほうは子猫や大人猫ともコミュニケーションが取れたようで満足げ。
膝の上に乗ってくれた!
甘噛みしてくれた!
と色んなふれあいがあったようだ。
猫も大人より子供の方が好きなんだろう。
スイミング頑張ったもんね。
良かった、良かった。
私の方は…よく考えたら尻叩きに忙しすぎてゆっくり顔も見ていなかったかも。
そもそも彼らが私に向けてくるのは背中や尻ばかり、後ろ姿で寄ってくるから顔が見えない。
次また行ったら顔くらい触らせてくれるかな?
エサを買ったらもっと擦り寄ってくれる?
顔覚えてもらえるまで通い続けないといけない?
塩対応キャバ嬢に貢ぐおじさんの気持ちがちょっぴりわかった晩秋の出来事でした。