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その日の夢を見る ファイル2

今回は 二人の少年とそのお母さんとの音とアートでした。

Y君(8歳)とZ君(4歳)。Y君はおもちゃの剣を持って登場。Z君はぐっすりお母さんの肩の上で眠りながら登場。

最初は人見知り状態。多分、こんなに楽器やさまざまな"モノ" が散乱した空間に突然連れて来られてびっくりしたはず。笑

一体何をやればいいの?何をするの?このおじさんおばさん達は何をする人たち?遊ぶの?音楽教室っぽいけど、そうでもなさそう、、。
色々な感情が渦巻いていたんじゃないかなあ。

そして、どの子も割と最初はそうなんだけど、人見知りも相まって、Y君は最初はお母さんにずっとくっついていました。Z君は目が覚めてびっくり。どこここ。  

そんなこんなで、どんな展開になるのか未知のまま始まった音とアート。2時間という長尺を設けていますが、はたして2時間もつだろうか、と思わずには居られない滑り出しでしたが、先に言うと、どんどん末広がりに展開していきました。やっぱり遊びが生まれるプロセスは面白いと思わざるを得ません。僕たちも 毎回一緒に遊ばせてもらってる、、、、。

最初は、とにかく散乱している"モノ" たちと触れ合う時間。僕らには当然、どんな"モノ" も楽器に見えますが、子どもたちにも楽器に見えるかは別。もちろん、いかにも楽器の様相を呈したものもあります。トイピアノや、さまざまな形の民族楽器の笛や、太鼓、ウクレレなど。でもその中に、何本ものお箸(僕らは撥のつもり)やクッキー缶の蓋、オタマなんかもあります。
また、常連、僕らのライブにもいつも参加してくれる、真似が上手なゴマちゃんのおもちゃもあります。  

前回のH君は箸やオタマをおままごとに使いました。どう使うのかは、自由。そこからどんな遊びを生み出すか、を見守ります。  

けれど、僕達には「音とアート」だから何とか"楽器とは一般的に認識されていないもの" も楽器として使ってみてほしい、というねらいがあります。  

最初はY君、恐る恐る、という感じで色々お母さんに投げかけながら、楽器を手に取ってみていました。最初はオカリナや、さまざまな笛に興味を持っていました。恐る恐る、鳴らしてみる。どんな音がするだろう?穴を押さえずに吹くと息が漏れるので、穴を先ずは全部押さえ吹いてみたり、また、穴から一つだけ指を離してみたり、ということを見せながらレクチャーします。  

最初はかなり動きも固く、緊張気味で、このさまざまな"モノ" が散乱する空間でどう振る舞おうか、さぐりさぐりの感じでした。知らない人にずっとそばに居て見られていると緊張するかな、と思い、僕は時々、何か用事があるようなフリをして隣の部屋へ行ったりバタバタしたりしていました。

最初はかなり動きも固く、緊張気味で、このさまざまな"モノ" が散乱する空間でどう振る舞おうか、さぐりさぐりの感じでした。知らない人にずっとそばに居て見られていると緊張するかな、と思い、僕は時々、何か用事があるようなフリをして隣の部屋へ行ったりバタバタしたりしていました。  


隣の部屋から、小さな琴に似た楽器を持って来ました。鳴らしてみると、不揃いな調律が不思議な、少し不気味な響きを出しました。Y君は少し笑顔になりました。一番お気に入りだろう民族楽器のオカリナを吹いてもらい、僕は不揃いな調律の琴を箸で叩きます。エマは豚のおもちゃを鳴らします。不気味な豚の音楽が生まれました。Y君が弟のZ君に豚を鳴らしながら近づけると、Z君はいやがるそぶりを見せながらもはしゃぎます。しばらく、楽器に"触れてみる" 時間が続きました。  

兄弟で相談しながら、色々な楽器に触れていきます。

開始40分経過。緊張も少しずつ解けてきました。Z君は 他のコーナーにも興味を持ち始めました。よくお母さんのパン作りのお手伝いをするそう。粘土を見つけた途端、黙々とパン生地を練るように、粘土で何かを作り始めました♪手慣れています。

Z君の頭の中には、美味しいレシピが浮かんでいるのでしょう。巧みにお箸を使って生地に穴を開けています。頼もしい!

その後、僕は得意のダンボールハウスを作り始めました。Y君には小さいように見えましたが、Z君なら入れそうな大きさのダンボールがあったので、Y君に「Z のお家作ろうぜ」と呼びかけて制作スタート。窓をカッターでくり抜きます。窓枠になる部分を僕がカットし、くり抜く部分を、Y君にパンチしてもらいました。  ダンボールハウスが出来ると俄然盛り上がります。Z君はもう自分のものにしています。窓から顔を出してお母さんに写真を撮ってもらったりなんかしちゃってます。  

その間、エマが"z house" という表札を作ってくれました。どんどんアドリブが効いて来ます。表札を屋根に乗せ、Z house の完成。狭い中に二人して入ったりなんかしています。少しずつ、心が開けてきました。少年は自分の巣が大好きです。僕もいまだに、庭に自分の小屋を作ろうとしているぐらいです。忙しさにかまけて全然取り掛かれてないけど。でも、音とアートで、子どもたちがダンボールハウスに入って遊ぶのを見るだけで、自分も入った気になれます。笑

Z君、居心地良さそう。

前回のH君は、自分なりの遊びのイメージを持って、この場に来ている様子でしたが、Y君Z君は一回目というのもあり、基本的には僕らが提案する遊びについてくる感じでした。なので、常に楽器の周りに居たし、音に集中出来たかな、という気はします。  

Z君は、エマと一緒に遊んでいました。トイピアノの上に、ゴマちゃんを乗せながら、ゴマちゃんに自分が弾いた音や自分の声をレスポンスさせていました。それから、ソファーの背もたれを尾根伝いに歩いたりと、彼はなかなか動きます。  

キーボード遊び。どんな音でも出していいよ!

僕は基本的にお兄ちゃんのY君と遊んでいました。鍵盤楽器にも触れてもらおうと、シンセサイザーの前に彼を連れて来ました。まずは、一緒に触ってみました。最初はやっぱり、恐る恐る。お母さんもついて来てくれました。お母さんにも促されながら、鍵盤に触れます。かなり恐る恐るだったので笑、僕が彼の手を取り、適当な音で一定のリズムを刻ませました。そのまま僕は手を離し、彼が刻むリズムに合わせてビートを刻む。小さく弾いたり、大きく弾いたり、揺らしたりして。Y 君も抑揚を感じてついて来ます。何かわからないけれど、即興演奏ができました!一同拍手。その様子を見て、弟のZ君も駆けつけました。彼は、Y君の横でバン!バン!と鍵盤を叩きます。  まずは、音を出すことを恐れないで、どんな音でもいいから鳴らしてみよう。それを伝えたかったのです。  

そろそろ、終わりの時間に近づいてきていましたが、だいぶ、Y君の行動範囲も広がったし、Z君に至っては部屋中を動いてエマと遊んでいます。Y君も、心が開いてきて、わざとゲップをしたりし始めました。お母さんがいやな顔をするのを楽しんでいるようです。僕も小学校の頃よくやりました。

僕はマイクを持ってきて、録音の準備を始めました。さまざまな音が鳴るこの瞬間を記録しておきたくなったのです。マイクが目の前にあると、Y君もZ君も、マイクに向かって何か言いたくなるようで、二人で色々叫んだりマイクの前でゲップをしたりしていました。そうそう。自分の鳴らした音がはっきり聞こえる、って面白いこと。

Oto to Art の間は、どの瞬間の面白い音を逃さない為に 終始 録音を回しています。

僕は閃いて、Y君にマイクの前でゲップをもっとしてくれ、とリクエストしました。普段、どんどんゲップをしろと言われることなんて無いので、彼も喜び胃酸で、、いや、勇んでゲップを沢山してくれました。ゲップがスピーカーを通して聞こえると、一同大爆笑。そして、マイクに向かって何か喋って、とリクエストすると、色々とお母さんや家族への日頃のうっぷん?家庭内時事?をつらつらと笑いながらスピーチし始めました。お母さんも、「今なら何でも言っていいよ」と太っ腹です。僕はぜーんぶちゃっかり録音しています。それをプレイバックすると、みんな爆笑。そこに更に、僕がコードとベース音、また、ドラムを重ねます。まるでラップ!ゲップの音も重ね、今回の音とアートを飾るテーマソングの出来上がり。

マイクを目の前にすると、声だけでなく「楽器の音も拾うのかな?」と色々トライしてみるY君。

普段、自分の声や鳴らした音を客観的に聞くってあまり無いことだから、かなり新鮮で刺激的な経験だったみたい。どんどん本音をぶちまけてくれました笑  マイクがあると、はっきりと自分の鳴らした音が聞こえるから、色々な"モノ" をマイクを通して聞いてみよう、という行動も生まれていました。何より、自分の鳴らした音が音楽になることを発見するのって、楽しいし、なぜかわからないけど、笑いが生まれる。その時にしか生まれない音。お母さんが、これをYの成人式で流す、と言ってたけど、ナイスアイデア。自分の音をとにかく形にして聞いてみると、善い、悪いという評価を超越した肯定が生まれます。  

"音を鳴らす" ということに、最初は"行為者" として向き合っていましたが、客観的に聞くことを覚えると、"音そのもの" への興味が開かれます。マイクを取り入れるのは、そういった意味でかなり有効だなと実感しました。  

もちろん、"運動" は耳には聞こえないけれど、からだに流れる立派な"音" ですが、子どもの頃から"音そのもの" に触れてみる、耳をひらく、ということはとても大切なことだと思っています。なので、今回マイクを立ててみて、良かったなあと思いました。次回以降への大きな参考になりました。  

また、子どもが発する汚い言葉には、ある意味でパワーがあります。意味というよりは、ただ言いたい、その根底にある少年的なグルーヴを拾いたいなあと僕は思ったので、汚い言葉もどんどんマイクの前で言わせて、ビートをつけて音楽にしました。    

宴が終わり、みんな帰った後に、Y君の叫びとゲップの音楽に、更にエマのフルートやサックスの音を重ね、クラブジャズ風にしたものと、レゲエ風味にしたものの2トラックをお母さんに送りました。  
すぐお返事が返って来て、「本人とても喜んでいます」と。もっと遊びたかった、とも言ってくれてたようです。そうそう、お母さんが帰り際、「この子たちが、特にY君が、こんなに遊ぶこと普段無いですよ!」と言ってました。

2時間という長尺に思える時間ですが、加速度的に展開していきましたね。"遊び" のエネルギーは、デザートのようにベツバラなようです。"集中力" とはまた違った、持続可能なエネルギーがあるようです。僕達も楽しませてもらっています。  

また遊ぼうね!

"Oto to Art" 主催の 音楽ユニット、「どいしゅぽんとしゅ」の雄飛とエマです。
皆さんのご参加、お待ちしております!

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