【信州松本の説話を語りたい】3.龍の子太郎とウルトラマンタロウ
さて、前回、「まんが日本昔ばなし」のオープニングでお馴染みの龍のに跨る子供は「泉小太郎」がモデル、という話をしたが厳密に言うと違う。
直接的なモチーフは、童話作家、故松谷みよ子氏の代表作の一つ
「龍の子太郎」(たつのこたろう)
であるといわれている。
(引用元 龍の子太郎(新装版) (児童文学創作シリーズ))
『龍の子太郎』(たつのこたろう)は、松谷みよ子の児童文学である。本作を原作としてテレビ番組やアニメーション映画が製作されたほか、人形劇、ストレートプレイ、ミュージカル、マスクプレイ、舞踊劇などの舞台化もされている。
本作は、長野県の信州・上田に伝わる民話『小泉小太郎』と松本に伝わる民話『泉小太郎』を中心に、秋田の民話など日本各地に伝わる民話を組み合わせ、再話している。創作の過程は松谷の自著『民話の世界』に詳しい。
松谷は本作品で第1回講談社児童文学新人賞、国際アンデルセン賞優良賞などを受賞した。
(引用元 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/龍の子太郎)
「いわれている」としたのは、元ネタはWeb上では「龍の子太郎」だと言及している話をチラホラ見かけるが、制作に実際携わった方のお話など直接的なソースが見つからないためである。
それはさておき「龍の子太郎」が発表されたのが1960年。
「まんが日本昔ばなし」が放送されるのが、1975年。
その15年の間に賞を受賞されたり、舞台劇化されるなどし知名度があがり、当時は記憶に新しい「昔話」の代表作の一つとして定着していたのではないだろうか?
60年代〜70年代、日本では民話が見直され、その代表、シンボルとも言えるのが「龍の子太郎」という創作民話だったのだと考えるとシックリくる。
「まんが日本昔ばなし」のオープニング、龍に跨る子供の図は、やはり「龍の子太郎」が直接的なモチーフなのだろう。
そしてそれを裏付けするかのように当時のクリエイターへの影響は割と大きかったのではないか?と思い当たったのが、幼少の頃大好きだった「ウルトラマンタロウ」である。
僕は再放送で観ていた世代だが、幼い頃の目には単純にタロウの見た目のカッコよさに惹かれており、タロウという名前にもなんの違和感も感じず割と素直に受け止めていたが、思えば不自然過ぎるネーミングで、思わず吹くレベルだ。
その不思議なネーミングは実は企画当初は「タロウ」ではなく「ジャック」で進んでいたそうだ。
当時、日本赤軍をはじめとするハイジャック事件が続けて起こっていた時代であり、ハイジャックを想起させるネーミングをやめ、ジャックに相当する名前としてタロウになった、という話である。
しかし、例えばイギリス民話の「ジャックと豆の木」など、「太郎と豆の木」としても違和感なくスッと入ってくるが、「切り裂きジャック」が「切り裂き太郎」としてしまった、ウルトラマンジャックをウルトラマンタロウにしたのはそれまでの作品イメージからしても随分思い切った感はある。
作品内容としては、ウルトラの父と母が登場しその実の息子としてタロウがいるという、それまでのシリーズではなかった要素がある。泉小太郎伝説における母犀龍、父白龍王を想起させる。
また、タロウに変身する青年の名前は「東光太郎」。
作中では「ひがしこうたろう」と読ませているが、「東」を「あずま」と読ませると「あずまこうたろう」とかなり「泉小太郎(いずみこたろう)」に語感が近くなるのは、意識しているように感じてしまう。
また、ウルトラマンタロウの後続番組「ウルトラマンレオ」では「日本名作民話シリーズ!怪獣の恩返し−鶴の恩返しより−」などという、日本の民話をモチーフにした異色回が数回続いたりする。
そして「ウルトラマンタロウ」の脚本家 田口成光氏は長野県出身であり、上記の怪獣の恩返しの脚本も手掛けているのだから、あながち僕の妄想は遠からず当たっているかもしれない。
ついでなので紹介すると、近年(と言っても10年ほど前)では「仮面ライダー電王」にも「リュウタロス」という「龍の子太郎」をモチーフにしたキャラクターが登場していたそうだ。
僕は観た事がないのでどんなキャラクターなのかは分からないが、作品内のモチーフとして桃太郎や金太郎に肩を並べる◯◯太郎の代表的な1人に数えられるくらいに「龍の子太郎」が近年でもなお認知されている証でもある。
たまたまウルトラマンと仮面ライダーというキャッチーな例を出してみたが、松谷みよ子氏が創作した「龍の子太郎」が、それほどまでにパワフルな民話だったのだと思えてくる。
そして原典である「泉小太郎」も蘇った。
伝説にゆかりのある土地では今なお多かれ少なかれその恩恵、影響を受けている。
例えば先の記事で写真を出した弘法山では近年になってから泉小太郎祭りが行われるようになり、そこに銅像が立つのも平成10年からである。
他にも松本山雅のサポーターコミュニティのシンボルになっていたり、とある和菓子店では「泉小太郎」の名を冠した菓子を売り出していたりと様々だ。
しかし、そうなると何故松谷みよ子氏は「龍の子太郎」を創作しようと思い至ったのか?「泉小太郎」の何がそうさせたのか?
その辺が気になり、松谷みよ子氏の自著「民話の世界」を読んでみたわけだが、その話はまたにしようと思う。
続く
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