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エビデンスのある療育ーFBA実践編

こちらの記事HPの方でリライトしました、よろしければそちらも合わせてご参照ください!


前回の続き

この記事は前回の続きです、まだ読まれていない方はそちらを先に読んでいただいた方が良いかもしれません。

実践その1ーデータ収集

準備編で選択したいくつかのアセスメントツールや、イタビュー用紙を活用して実際にプラン通りにデータ収集を行います。
行動観察から、問題行動の発生状況や、機能を分析するにはABC分析が有効です。また、行動パターンを分析するにはデータテーブルを活用することができます。

ABC分析の例

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データテーブルの例
*どの程度の粒度(時間、頻度、etc)で取得すべきかは準備編のデータ収集プラン作成時のものに準拠します。

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実践編その2ーデータ分析

データ収集を行い必要十分と考えられるデータが得られた場合に次に行うのは、それらデータの分析です。すなわち、その行動はいつどんなときになぜ発生するのかという点を集めた材料をもとに明らかにします。
データ分析を行う上で進め方としは、下記の質問に回答できるように収集したデータから結論を導く方法が有効です。

質問リスト
・どのくらいの期間(時間)に渡り、その問題行動は児童の成長や学習を妨げていますか?
・その問題行動は攻撃や所有物への損害を引き起こしていますか?
・どんなシチュエーションで問題行動が起きますか?
・問題行動が起きるとき、児童はどのような活動に従事していますか?
・問題行動が起きるとき、周囲の人(先生、児童、支援者)はどんな行動をしますか?
・問題行動が起きるとき、周囲の人と児童の距離的な近さはどの程度ですか?
・問題行動が起きるとき、周囲の騒音具合はどの程度ですか?
・問題行動が発生したとき、大人や他の児童は何名、同時にその場にいますか?
・問題行動が起きるとき、光や温度等の環境要因はどんなものがありますか?
・その問題行動は、児童がまだ出来ないタスクを行うように指示されたことによって引き起こされますか?
・その問題行動が起きる直前に児童が行う行動はありますか?
・問題行動の直後に発生する結果は何ですか?

また行動の機能も特定します。その問題行動によって達成されていることが何なのか、明らかにする上で、行動の機能は大きく2つのカテゴリに分けることができます。

行動の機能画像3

実践その3ー再定義と検証

プランニングから、実際にデータを収集し分析した結果、いろんな情報が明らかになったタイミングで一旦問題行動に関して再定義を行います。
事実に基づいて、どんな時に、どんな先行刺激で、どんな問題行動が発生し、結果何が起きたのか、この時問題行動の機能は何か、整理してチームメンバーが理解できる形で記述します。


個別指導の時間(状況)に一人で、プリントを解くようたかしに告げる(A)と、たかしは叫び声をあげ、また「やだ!!!」と言います(B)。なぜならたかしにとって自分一人でプリントを解くのはまだ難しいからです。たかしは落ち着くように教室のすみのセーフスポットに連れられ(C)てお気に入りのおもちゃで遊ぶ事が出来ます(獲得)。

問題行動に関して仮説の再定義を行なったあとで、その仮説が正しいかチェックする事が必要です。この時点で簡単にチェックする事で誤った仮説のまま支援を行い時間を無駄にしてしまう、児童にとって辛い時間が増えるなどのリスクを減らす事が出来ます。検証の方法は行動によって様々です。

検証の例
たかしの問題行動は、難易度が高い課題からの逃避か、または自分の好きなおもちゃで一人で遊べるという獲得であるように考れます。例えばこの二つを検証する方法として、課題に取り組む際に大人が手助けをするという変更と、たかしがセーフスポットに行く際に行う活動を彼があまり好きでない(出来ないわけではない)読書に変更するという二つの変更を加える方法があります。この場合難易度を低くしたのにも関わらず、問題行動が発生しまた出来ないわけではない読書をするように言った時に問題行動が生じるのであれば、その問題行動の機能はやはり獲得(好きなおもちゃで遊ぶ)であると確認する事が出来ます。

実践その4ーEBPsから適切な介入方法を選択する

FBAは主に深刻な問題行動の特定と分析に関して機能し、実際の介入あたっては、FBAによって明らかになった状況に応じて他のEBPs(科学的根拠のある介入方法)を用い介入します。行動の機能別にふさわしいと考えられている主な介入方法は下記になります。

注目
・FCT(Functional Communication Training)
・EXT(Extinction)
・DRA(Differential Reinforcement)

逃避
・ABI(Antecedent-based intervention)
・RIR(Response Interruption/redirection)
・FCT(Functional Communication Training)
・EXT(Extinction)
・DRA(Differential Reinforcement)

自己刺激(感覚刺激でかつそれ自体強化子として機能しているもの)
・ABI(Antecedent-based intervention)
・RIR(Response Interruption/redirection)
・FCT(Functional Communication Training)
・EXT(Extinction)
・DRA(Differential Reinforcement)

獲得
・FCT(Functional Communication Training)
・EXT(Extinction)

実践その5ー介入計画の作成

具体的な介入方法を作成したあとで、実際にどのように介入していくかプランニングします。最低限含む情報としては、問題行動の発生を抑制する戦略、問題行動の代わりになる行動を教えたり増加させる戦略、学習機会や社会参加を向上する戦略。これらが必要です。

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実践その6ープラン実行と測定

計画を実行し、介入の効果測定を行います。効果測定を行う時には、計画時に作成したものに準拠して行いますが、特に問題行動の発生頻度、発生時間の合計、代替行動(問題行動の代わりに行う適切な行動)の頻度を計測する必要があります。

頻度測定方法の例
・Whole interval sampling (例9:00-9:30の区間を5分刻みに分割し、その5分間の間ずっと行動に従事している場合にチェックする)
・Partial interval sampling (例9:00-9:30の区間を5分刻みに分割し、その5分間の間一回でも行動に従事している場合にチェックする)
・Momentary time sampling(例9:00-9:30の区間を5分刻みに分割し、ちょうど五分のタイミングで行動に従事している場合チェックする。)
・Event sampling(その日の中で問題行動がどれだけ発生した)

Momentary time samplingの例

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Event samplingの例

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長さや程度の測定方法
・Duration data(特定の日や期間の間に合計してどれだけの時間、問題行動が発生していたか)

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行動対応の効果測定
問題行動が発生する活動に取り組む際に事前に介入し問題行動を減少させる方法と、問題行動が発生した後の対応を変化させて問題行動を減少させる方法の効果を測定するにはあらかじめチェックフォームを用意して置くことが有効です。
以下のような例の場合ですと実際に方針通りに介入した回数と、その介入によって行動の変化等が見られた回数の差分がわかります。

チェックフォームの例

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まとめ

以上が実際にFBAを用いて問題行動を減少していくための方法になります。しつこいくらい念入りに、仮説を立て検証し介入しているように感じられるかもしれませんが、ここで仮説立てや分析、検証を行うことで支援がうまくいかない時間を限りなく短くできると考えると、メリットはかなり大きいのではないでしょうか。

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/783


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