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エビデンスのある療育ーABI実践編

HPの方でこちらの記事リライトしましたので、よろしければそちらも合わせてご参照ください!


前回の続き

このノートは前回のノートの続きです。まだ読まれていない方はそちらを先に読むことをお勧めいたします。

前回のABI準備編においては、そもそもどんなアプローチなのか、またその為に必要な準備に関してまとめました、今回は前回、行動に関して分析しまた定義したゴールを達成する為に、どのように実践していく事ができるか、紹介します。

介入方針を選択する:対象行動の機能が逃避の場合

1.児童の好きなものを活用する
この方法は、対象となる行動が発生する活動において、児童がすごく好むものを取り入れる事で、その活動からの逃避を避け、また活動に取り組む時間を児童にとってより実りのある楽しい時間にするための方法です。


プリントにひらがなやカタカナを書き写す時に、その子が大好きなキャラクターの鉛筆を使えるようにする


児童の好きなものを特定する時には、ご家族に話を伺ったり、日々の観察から児童が喜んでいるものや夢中になっているものを見つけることができます。

2.予測可能なスケジュールと視覚の活用
この方法は、逃避行動の中でも、場面の切り替えなどの時に起きるものに対して有効な方法です。この場合の逃避行動は、切り替わる事それ自体が先行刺激となっている事が多く、この点を解消するには場面の切り替わりや次に何が起きるのかということを事前に児童が理解しているという事が有効です。(予測可能である事)
事前に場面の切り替わりや予定に関して児童が理解をしておく上で有効な方法は以下の例のような視覚を活用した予定表があります。文字だけのものや様々なバリエーションがありますが、何が起きるのか児童がわかる形で提示する事が重要です。

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3.事前活動の活用
先ほどのスケジュールの視覚支援と非常に似ています。ある活動に取り組む最中に対象とする行動が発生する場合に、その活動に取り組むまえに活動の一部を切り取ったものを事前に行い活動がこれから始まるという事を予測可能な状態にする。事前に告知を行い、何をするかまた何が起きるか予測できるような状態にする。これらの介入で対象とする行動の発生を抑える方法です。言葉で説明すると少しわかりにくですが例を参考にしていただければと思います。

事前告知パターン:学校のチャイムがあと五分でなることを、児童に伝える
事前活動パターン:書き取りの授業を始める前に、前回の書き取りのレビューを一緒にする
事前確認パターン:1日の流れ・変化を児童と一緒に確認する
活動分解パターン:取り組む活動の流れを分解して事前に児童に伝える


4.児童に選択させる
対象の行動が発生する活動に取り組む際に、逃避が発生することを防ぐ方法として、児童に選択させる事が有効です。この方法は、特に活動に従事することを拒絶するような場面で、非常に効果的です。児童はそのシチュエーションに対して、どちらから先に取り組むか、また取り組む際に何を使うかなど、コントロールする権利を獲得することでモチベーションが向上しまた、逃避が発生しにくくなります。さらに、選択肢の提示は、児童にどちらを選ぶか等、自身で要求することを求めるため言語能力や社会性の向上にもつながります。


プリント課題に取り組む際に、何色のペンを使うか児童に選択させる
着席して課題に取り組む際に、どこに座るか児童に選択させる


5.カリキュラムの変更
より意欲的に児童が活動に参加したくなるように、指導要綱や指導方法自体を修正することも有効です。変更の方針としては以下のものが挙げられています。

環境調整
児童が課題に取り組む場所を、机以外の場所でもいいようにする。一人で落ち着ける静かなスペースを用意する。小集団の中で一緒に作業するのではなく、ペアで作業できるようにする。等々児童に合わせて環境を変化させる。

サポートツールの採用
可能な限り児童が自立して取り組む事ができるように、意思表示のためのYesNoカードや、プリント上に取り組む順番を記載するなどの工夫をする。

活動の単純化
取り組む活動をより簡単にする、または取り組む活動を細分化して、小さなステップに分けて提供する。

大人からのサポート
児童が活動に参加できるように、実際にやって見せるなど大人が直接手助けをする。

ピアサポート
自閉症児と関わりのある児童が、手助けをする。

視覚支援を使う
情報がイラストで伝わる、時系列にそってやる事が視覚的に理解できるなどの工夫をする。

介入方針を選択する:対象行動が獲得の場合

1.感覚刺激を用いた、環境調整
自閉症児の場合には特定の感覚刺激を満たすための行動を行う事があり、それを別な手段で代替する事によって、活動中に不適切行動が発生することを抑制する方法です。
どの感覚刺激がマッチするかを確かめる方法としては、5分間特定のアイテムに自由に触れる時間を設け、30秒間ごとにアイテムを使用しているか確認し、全体の75%の区間でチェックがついた場合そのアイテムは求める感覚刺激とマッチしていると考えられます。

プランの作成

選択する介入方針を決定した後で、週次の介入プランを記載します。記載項目としては、これまでに定義した、ゴールと上記の戦略のうちどのようなアプローチを採用するのか、アプローチの具体的中身、これらの実施に必要なものを記載します。

プラン実行時の強化

作成したプランを実行する際に忘れてはならないのは、対象となった行動(不適切行動)を行わなかった時、また定義したゴールを達成できた時には「強化」を行うということです。
強化とは
強化子(児童が好む物や活動)を用いてある行動を増加させることを目的とした介入です。例えば離席せず課題に取り組む事ができた際にはすぐに、5分間の休憩タイムを提供することなどがこれにあたります。強化子は対象とする活動の難易度や児童の好き具合を勘案して妥当だと思われるものである必要がありまた即時性(すぐに提供する)事が重要です。
*ただし不適切行動の場合にはそれについて、注目したり強化をするようなことは避ける必要があります。

効果測定

行動を特定・分析し、ゴールを定義し、介入方針を決め、プランを作成し、実行まできました。最後に重要なのはその介入プランで効果が出ているかチェックする事です。
このプランで効果が出ているのか測定する方法として、頻度を計測する方法と時間を計測する方法があります。
頻度を測る
週次のプランが開始されるタイミングで、定義した行動が1日のうちで、どれくらいの頻度で発生しているか以下のように計測します。介入が始まってから頻度が減少している場合には効果が出ていると考える事ができます。

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時間を測る
対象とする行動をしていた時間の合計を計測します。頻度計測で得られる発生しているか、していないかという情報よりも一歩進んだ考察ができる材料が手に入ります。

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まとめ

以上がABIを実践する大まかな流れになります。実際に取り組む中で効果が見られない場合には、行動の定義や、行動の機能を見誤った可能性や、介入する方針が適切でない場合など様々な理由が考えられます。そのため週次での計画で効果があまりにも見られない場合には、既存の計画を延長して様子を見るよりも一度振り返りを行い、計画の見直しを行う事が推奨されています。
まず何が起きているのか、ABC分析を行い、分析結果をブラッシュアップして、介入方針を決め、効果測定を行い、計画が順調か確認し継続的にアップデートしていく。継続的に改善する上でABIは非常に考えやすいフォーマットなのではないでしょうか。

リファレンス
https://afirm.fpg.unc.edu/node/1094



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