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未来のまちづくり ~「でんきとクルマからの脱炭素社会のつくり方」~

トヨタ自動車の未来都市「Woven City」の建設地である、静岡県裾野市。
裾野市自体も未来のまちづくりに向けて、「スソノ・デジタル・クリエイティブシティ構想」を進めています。
静岡県内の学生インタビュアーが、裾野市みらい政策課の皆様にインタビューし、AIをはじめとしたデジタル技術を駆使して目指す未来のまちづくりと、そこでの市民生活のイメージについてお話を聞きました。

インタビュー先紹介

裾野市みらい政策課
「デジタル」と「クリエイティブ」という2つのキーワードをコンセプトとした「スソノ・デジタル・クリエイティブシティ構想」を推進中。
トヨタ自動車の未来都市「Woven City」建設の支援もしている。
「スソノ・デジタル・クリエイティブシティ構想」

インタビューに答えて下さったのは…
 ・長田雄次さん(裾野市みらい政策課)
 ・藤田慎之介さん(裾野市みらい政策課)

学生インタビュアー
 静岡県内の高校1~2年生 4名

Q まず市役所でのお仕事について、どんな雰囲気の職場なのかを伺いたいです。

(藤田さん)
はい。まず、裾野市は人口5万人ぐらいの小さなまちで、職員の数もそれほど多くありません。だいたい職員同士で顔と名前が一致するような、わりと近い距離で仕事ができていると思います。
また、明日から新年度で、人事異動があります。行政の仕事はとても幅広いので、異動はほぼ転職に近いくらい仕事内容が変わります。

(長田さん)
例えば静岡市や浜松市などの政令指定都市だと、職員同士でも、全然会ったこともなく、名前も知らないということがたくさんあると思います。人事異動の話が出ましたが、裾野市では新しい部署に行っても、はじめましての人はほとんどいなくて、もうみんな知っているような感じです。そういう仕事のやりやすさはありますし、それもこの小さなまちの良さでもあります。
そんなつながりの強いコミュニティの中で、僕らは市役所で働いていることもあり、地域のいろんなお祭りやイベントにも参加して、地域の皆さんと良好な関係を作っていくことを意識しています。

Q スソノ・デジタル・クリエイティブシティ(SDCC)構想の「市民生活を豊かにし、市民が生きる喜びを実感できるまちの実現」というスローガンについて、具体的にはどんなまちを理想としていますか?

(藤田さん)
裾野市では、スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ構想というものを掲げてまちづくりの取り組みを進めています。
「デジタル」という言葉が入ってはいますが、裾野市としては、ただデジタル化したまちを作りたいというわけではありません。
例えばモノやサービスを提供する際、今まで人間が頑張っていれば、なんとか回っていた部分が、今後人口が減っていくことによって、人手が足りなくなることが予想されます。そうなると、これまでの生活を維持できなくなってしまうこともあり得ます。
そのため、例えば人間でなくてもできることは、機械とか、ロボットとかAIで補い、本当に人がやらなければいけない部分に集中してマンパワーを使っていくことができれば、より充実したサービスの提供ができるのではないかと考えています。
また、デジタル技術やAI技術を活用すれば、生活の中で今まで自分でやらなければならなかった作業が減り、時間に余裕が生まれてくると思います。その時間をどう使っていくのか。これまでの生活により選択肢が増えてくると思います。そういった形で、市民の生活の豊かさも実現されていくことを目指して、この構想を立ち上げています。
今の話で伝わりました??

(学生インタビュアー)
見えました!

Q なぜ裾野市がWoven Cityの場所として選ばれたか教えてください。

(長田さん)
もとをたどると。昭和の時代、裾野市は農業や林業が中心の町でした。
皆さんはもちろん、僕も生まれてない60年以上前の話です。
その頃は静岡県内で一番貧しい町と言われていたらしいです。
昭和35年に裾野町工場設置奨励条例というものを作って(当時は市ではなくて町でした)、工場を誘致していくことになりました。その背景には、例えば東海道新幹線や、東名高速道路が開通する予定など、将来的な見込みもありました。
そうして先人の方々が工場誘致に力を注いでくれた結果、今、トヨタ、矢崎、キャノン、ヤクルトなど、みんなもきっと知っているような、大きな企業が裾野市に立地をしてくれました。そして、それから50年、そういった企業が裾野市に居続けてくれました。
その後、2011年に東日本大震災がありました。Woven Cityの建設地には元々トヨタ自動車の大きな工場がありましたが、その工場を復興支援などの意味合いもあって東北に移すことになりました。
移転するとなると、その跡地をどうするかということになりますよね。
工場で働いていた従業員の方々も、裾野市や近隣に住んで工場に通っていたので、家族を含め、生活の基盤があります。そこで、工場を運営していたトヨタ自動車の子会社の従業員の方々が、トヨタ自動車の豊田章男社長に、東北に移転した後、この跡地はどうなるんですか?と勇気を出して聞いたそうです。
すると社長がその場で、従業員の方々に、あの土地には将来にも語り継がれるような、Connected City(インターネットでモノや情報やサービスなどがつながるまち)をつくるとおっしゃったことがWoven Cityの発端だそうです。
つまり、裾野市が選ばれた背景には、先人たちが工場を誘致して、あそこに工場を持ってきてくれたこと、そして、企業が地域との信頼関係によって50年以上ずっと裾野市にいてくれたことがあります。だからこそ、裾野市でWoven Cityをやろうと社長も思ってくれたのだと思います。
またもう一つは、やっぱり富士山。これが大きいですね。企業さんにとって、富士山が間近に見えるところに工場や研究所があるというのはすごく魅力です。あとは水が豊富なこと。工場は水をたくさん使うので、豊富な地下水をくみ上げて使えるとことも大切です。
さらに、東京から1時間ぐらいで来られる立地条件も、トヨタだけではなく、いろんな企業に選ばれている理由だと思います。

(学生インタビュアー)
知りませんでした。ありがとうございます。

Q Woven Cityの1番の魅力とはなんでしょうか?

(長田さん)
これは逆に皆さんにも聞いてみたいですね。Woven Cityは裾野市がつくるまちではなく、トヨタ自動車が自分の敷地で自分のお金で自由につくるまちです。裾野市は、トヨタ自動車が行うことを行政として支援していこうというスタンスです。
個人的に感じるWoven Cityの魅力で言えば、皆さんあのまちのイメージ動画などを見たことありますか?

僕は初めてあの動画を見た時にすごくワクワクしました。
例えば自動運転の車でまちの中を移動したり、地下の空間でロボットが自動で物を運ぶ物流だったり、自分が住んでいるところにロボットがいたり、いろんなデータがAIで解析されてさらにその結果が現実の世界にフィードバックされて暮らしが便利になったりするイメージを見て、そういうまだどこにもないようなものが裾野市にできるということの驚きとワクワク感がはじめのインパクトとしてありました。
逆にちょっとみなさんにも聞いてみたいですね。Woven Cityの印象など。

(学生インタビュアー)
やっぱり「新しい」という印象が強いです。今までにない新しい世界みたいな感じですね。私にとって。

(長田さん)
なるほど、他のみなさんはどうですか?はじめてWoven Cityを知った時でもいいし、今の印象でも。

(学生インタビュアー)
まるでドラえもんの世界のような、近未来なイメージです。それが本当に実現されていくんだなと思うと、私もすごくワクワクしました。
さきほど、スソノ・デジタル・クリエイティブシティ構想の具体的な理想像を伺った時にも、「見えた!」と言ったんですけど、人間の能力を適切なところに集中させて、他のことをする余裕を持つことができれば、「生きがい」っていうか、なにか人間にとっても新しいものが見つかるんじゃないかと感じました。

(長田さん)
やっぱり「見えてる」ね!
これについては、トヨタ自動車が大事なこと言っています。「あのまちは人中心のまちだ」ということを言っているんですよ。今おっしゃったことと同じです。いろんな技術を使って、単にデジタル化されただけのまちをつくるんじゃなくて、人が実際に暮らして、人の幸せがあふれるまちということを言っているんですね。だからあくまでデジタルやロボットやAIはそのための手段でしかないんですよ。要は人が暮らしやすくて、住み続けたいと思えるまちじゃないと意味がないということが、根本にあると思います。

(学生インタビュアー)
最初にWoven Cityのことを知った時、映画を見ているようで、すごい!と興味をそそられました。Woven Cityの舞台となる所が県内の裾野市と聞いて、同じ静岡県民とし誇らしいというか、楽しいという気持ちになりました。

(学生インタビュアー)
Woven Cityのことを聞く前は、裾野市のことをあまり知りませんでした。でも未来都市がここに作られるということになれば、静岡市などと同じように発信拠点としてこれから今以上にまちが栄えていくんだなと思うと、すごくうれしいです。

(長田さん)
世界中から人が来るというインパクトもあります。いろんな研究者や技術者が、このまちを見てみたい!と国内だけでなく海外からも裾野市に視察に来ることになるでしょう。

Q なぜSDCC構想でデジタルとクリエイティブをコンセプトに決めたのかということと、今後のまちづくりで必要だと思われることをお聞かせください。

(藤田さん)
まずデジタルの部分については、皆さんもスマホなどを使いこなしていると思いますし、新しい技術もどんどん生まれてきています。国の動きとしても、デジタル庁ができたり、岸田内閣でデジタル田園都市国家構想ができたりという中で、デジタル技術を活用していくことは重要なキーワードだと考えています。
一方で、新しい技術も、使う人がこれまで通りの使い方をするだけでは発展しません。そこで、より新しい発想を持った方とデジタル技術を組み合わせれば、さらに新しい価値を生んでいくのではないかと考えています。
例えばユーチューバーなどは、YouTubeに動画を上げて有名になったり、お金を稼いだり、まさしくインターネットという技術と発想で勝負している人たちですよね。新しい技術と斬新な発想をもって、これまでにない取り組みができるのではないかということで、このデジタルとクリエイティブの2つのキーワードがコンセプトになりました。

(学生インタビュアー)
すごく楽しいですね。

Q 未来都市のそのパイオニアとして世間にどのような魅力や取組を広げていきたいですか?

(藤田さん)
ちょっとパイオニアと言われると・・・(照)、次世代のまちづくりをしている自治体の一つとしてお答えさせていただきます。やっぱり市民生活を豊かにして、市民が生きる喜びを実感できるまちの実現というのが一番根幹にあるので、それを実感してもらうための取り組みを今後やっていきたいと思っています。SDCC構想の実現は行政だけではできないので、今SDCCコンソーシアムという協議会のようなものを作り、市役所の他に市内外の企業や大学など86の様々な事業者さん達と協力して、一緒に新しいまちづくりに向けて色々と検討を進めています。
どういう取り組みをしていけば、市民に喜んでもらえるだろうかと考えながら様々な実証実験などを進めています。

Q SDCC構想を進める上で今力を入れていることはなんですか?

(藤田さん)
SDCC構想では、全部で9つの取り組みの方向性が示されています。

裾野市HP掲載の資料より

1つ目はWoven City周辺の整備と、周囲との調和という裾野市特有のものですが、それ以外のものは、幅広く行政の分野を網羅するような形で決めています。
現在、SDCC構想を立ち上げてから2年が経ちましたので、ある程度市民の方々にも取り組みの効果を実感してもらいたいということで、さらに分野を絞って取り組みを進めていくように市長から指示を受けています。
そのため、今後は公共交通を含めた移動に関する部分と、市民の健康の部分、さらに市役所自体のスマート化という3つの分野に、特に重点的に取り組んでいきます。一方で、今回皆さんがインタビュー目的にして下さっているような、脱炭素社会に向けたことなども当然取り組む必要がありますので、重点目標には力を入れつつ、他の取り組みについても、幅広く継続して進めて行きたいと思っています。

Q 日本だけではなく、世界でも未来都市を創りたいと考えている地域があると思いますが、そのような地域とのコラボや連携は考えていますか?

(長田さん)
Woven Cityは裾野市が行政としてつくるまちではありません。企業が、人がリアルな生活を過ごす中で、自分たちの技術を試しながら、絶えず変化させていくまちがWoven Cityです。世界のいろんな所でスマートシティをつくろうとする動きはありますが、企業からすると、やっぱり他の企業とのコラボもありつつ、最終的には生き残っていくための競争もあるのではないかと思います。
ただ、自治体同士であれば、今裾野市が世界のどこかとコラボしているわけではないのですが、浜松市や会津若松市、大阪府、つくば市など国内の色々なところでスマートシティの取り組みが行われています。そうしたところと、情報交換や意見交換を通じて良いところや悪いところを共有し、自分たちのまちづくりに活かすということはできると思います。

Q さきほど未来都市は人が作り上げるとお聞きしました。私たち一般市民に協力できることってありますか?

(長田さん)
これはむしろ私達に「こんなことをやってみたい」という思いをぶつけてもらうと、僕らとしてはありがたいです。皆さんの若い目線や考え方から「これからのまちづくりはもっとこうなんじゃないの?」という逆提案みたいなものをどんどんもらえると、すごくうれしいなと思います。
これからの時代は、ただ課題の解決策を考えるより、どこに課題があるのか発見する力の方がむしろ評価をされる時代だと思います。今は、高齢化や人口減少など、今まで自分たちが経験したことのない時代に入ってきているので、今までなかったような問題も出てくるでしょう。問題が明らかになってから解決策を考えていては遅いかもしれないので、先んじて、将来こういう問題がありそうだから、あらかじめ手を打っておくというような考え方が必要とされてくると思います。

Q 脱炭素に向けた取り組みについても今後力を入れていかれますか?

(長田さん)
裾野市も昨年10月5日にカーボンニュートラルシティ宣言を行い、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言しました。
目標は2050年ですが、勝負はこの10年間だと言われています。2030年までにどれだけ減らせるかというところなので、僕らもこの4月から新しい体制で、具体的に何をいつまでにどういう形でやるのかというロードマップ作りを始めます。
そのため、市内のいろんな企業さん達と勉強会をして、産業部門でのカーボンニュートラルを目指しつつ、家庭、オフィスの省エネや太陽光発電などの創エネなどについても併せてやっていく予定です。1年後に来てもらったらまた新しい話題を提供できるかなと思います。

Q 2050年、裾野市はどのようになっていると思いますか?

(藤田さん)
そうですね。皆さんの中での未来都市のイメージは、Woven Cityの映像のような感じかと思いますが、個人的には、あれは「結果」なのかなと思っています。市民が実際困っていることを、新しい技術で解決することの積み重ねで、ああいうまちになっていくのが理想だと考えています。新しい技術ができていくのはいいとして、その技術を困っている人たちに、適切に提供していけるまちができていればいいなと個人的には思います。

(長田さん)
僕ら行政のやることって、いつの時代も変わらないんですよ。
求めている最終的なところというのは、この地域に住んでいる人が、この地域に住み続けたいと思ってくれるということです。
Woven Cityでは幸せがあふれるまちという言い方をしていますが、幸せって人それぞれ違いますよね。そこを笑顔があふれるまちという風に置き換えると、その抽象度がぐっと下がってわかりやすくなるかなと個人的には思っています。結局、なんか幸せだなぁと感じる時って、だいたい笑っていたり、心がリラックスしたりする状態だと思います。そういう安心して暮らせる、ずっとそこに住んでいたいと思えるような笑顔があふれるまちになっていると思います。

学生たちの思う2050年

  • 誰もが生き生きと活躍できる笑顔あふれるハッピーな世界

  • 地域と市民がお互い声を出しあえる関係

  • AI、ロボットの社会進出!

  • デジタル機器の本体が消える(データだけのやりとりに)

インタビュー後、Woven Cityの建設予定地にいってみました!

ミニバスに乗って出発!

Woven Cityの玄関口となるJR岩波駅前。今は静かで小さな駅です。
これからのまちづくりについて周辺地域の住民の方が話し合いを行っています。

塀に囲まれたWoven Cityの建設地は、道路からチラリとみることができました。
広大な土地でたくさんの重機が作業していました。
数年後には、景色が一変し、ここに未来都市が出現するのだと思うと信じられない気持ちになります。

※「でんきとクルマからの脱炭素社会のつくり方」特設ページはこちら
※インタビューの内容、参加者の所属は2022年3月31日当時のものです。

この事業は2021年度、ふじのくに未来財団を通じ、静岡トヨタ自動車株式会社の「ハイブリッド基金」の助成を受けて実施しました。



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