220322 種のこと
野口種苗研究所、野口勲さんの著書「タネが危ない」。
生命のこと、種の大切さや危うさを教えてくれる本。
以下、自身の感想とともに乱暴かつ大雑把ではありますが、内容をお伝えします。
○固定種:地域で何世代に渡り育てられ、自家採取を繰り返し、環境に適応するよう遺伝的に安定していった品種。生育に時間がかかり、大きさもまちまち。種を保存し、次の年にも育てることができる。
○F1種:異なる性質の種を人工的に掛け合わせた雑種の一代目。同時期に同等の形に揃うクローンのような野菜になる。スーパーで並ぶのはほぼF1種。種を取っても次にできる野菜は親と同じようにはならない。
嫌気性の単細胞のバクテリア(細菌)から始まった生命の歴史。長い年月をかけて好気性の細菌が生まれ、多細胞生物が誕生し、動くものは動物に、動かないものは植物になった。動植物に共通しているのは好気性のミトコンドリア。ミトコンドリアは母系遺伝し、人類のミトコンドリア起源を辿るとアフリカ北東部に誕生した最古の人類に行き着く。
このミトコンドリアに何らかの異常が生じ、雄花がつかなくなったものを元に、様々な研究の結果、現在大量に流通している野菜の種、F1種が作られるようになった。本来の野菜の姿である固定種は生育時期が揃わず、大きさもまちまち。昔は量り売りで商売が成り立っていたが、現在の大量生産、大量消費には合わず、ロスが少なく同型の物が同時期に収穫できる野菜が重宝されるに至り、F1種を農家が育てスーパーなどに並べられる。
戦後、それまで爆弾を作っていた化学会社は農薬製造に移行。食糧難で大量の食物が必要となり、見栄えが良く同型の野菜を流通させることが喫緊の課題となったことが背景の一つ。
F1種は毎年種を購入する必要があるが、農家にとって利益が出やすく、また産地指定を受けた農場では生産調整に協力すれば補助金も出るので、高額な種を買っても元が取れる。大手種苗会社にしても、耐病性等を身につけた「強い」野菜の種を開発すれば以後何年も利益が見込めるので巨額費用を研究開発に投じる。その「強さ」のために、遺伝子組み替えが行われることもある。(土壌細菌の遺伝子を使ったアグロバクテリウム法等。)
除雄、雄性不稔などの方法でF1は作られるが、要は植物に強いストレスをかけたり、何らかの異常が生じた遺伝子を持つ個体を元にしている。そして、それらの植物を受粉させるのに大量のミツバチが働かされ、雄花のない植物の蜜を集め続けた結果、蜂群崩壊症候群(CCD)が発生。無精子症の雄蜂が生まれ、それにパニックを起こした働き蜂の雌たちが本能からか、一斉に巣である職場を脱走した。原因は明確になっていないが、巨額の利益が絡む問題。原因が分かったとしても国をあげて隠蔽されるのではなかろうか。
F1種とは人間の利益追求や身勝手な欲望によって作られたもので、本来の植物の姿と比較して異常なものである。とはいえ、本来植物が持つ力は人間の想像を超える。過度に敏感になりすぎるのもどうかとも思う。防護服に身を包まなけらばならないような農薬を散布された野菜以外ならば、F1の野菜だからと排除することもないだろう。あまり神経質になりすぎると、すでに農薬を使った野菜を何十年と食し、添加物に囲まれた生活に馴染んでしまっていることにストレスを感じ、病んでしまいそうだ。できるだけ避ける、程度にとどめた方が精神衛生上良いように思う。
植物が持つ生命力は、いくら人間に操作されたからといって全くなくなるわけではない。試しにスーパーで買ったパプリカの種を植えてみたが、みずみずしくて肉厚、美味しくいただいた。実をつけすぎるくらいで困ったほどである。
因果応報。利益、効率を求めた結果がいつか人類に返ってくることと思う。本当に微々たるものではあるが、今の自分にできることは少しでも多く固定種の野菜を育て、自分で種を取るということをできる限り繰り返していくことだと考える。 固定種の野菜とはどんな味がするのか、今から収穫が楽しみだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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