レイプ、パワハラ、何でもありの防衛省。その正体は内部の悪事を力で揉み消す腐敗組織だった
記事抜粋
元部下の男性は「逮捕は衝撃的で、パニックの中で取り調べが行われた。『言う通りにすれば罪は軽くなる』と言われた」と振り返り、「なぜ逮捕されたのか知りたい。パワハラを容認する風潮をなくしたい」と訴えた。
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東京新聞
パワハラを告発したら逮捕された自衛官たち…五ノ井里奈さんとの出会いに背中を押されて国を訴えた
第1回口頭弁論を終え、横浜地裁前に立つ原告の男性2人=27日、横浜市中区で
海上自衛隊でパワハラを訴えた後、隊内の警務隊に逮捕されたのは不当だとして、海自横須賀基地に所属する40代の男性自衛官と部下だった元隊員の20代男性が、国家賠償法に基づき国に計1000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、横浜地裁であった。原告の2人は「逮捕でパワハラをもみ消すのは許せない」と意見陳述した。原告側の代理人弁護士によると、国側は争う姿勢を示した。
◆「言う通りにすれば罪は軽くなる」
元部下の男性は「逮捕は衝撃的で、パニックの中で取り調べが行われた。『言う通りにすれば罪は軽くなる』と言われた」と振り返り、「なぜ逮捕されたのか知りたい。パワハラを容認する風潮をなくしたい」と訴えた。
男性自衛官は、2018年に横須賀基地の補給艦「ときわ」内でパワハラを受けた同期隊員が自殺したことに触れ、「若い隊員が苦しんでいて、放置できなかった。パワハラを容認する体質を反省してほしい」と語った。
訴状などによると、元部下の男性は21年12月、勤務していた自衛隊横須賀病院で、先任伍長から当直勤務を同僚よりも多く命じられ、容姿などをけなされたため、男性自衛官に相談した。男性自衛官は、他の隊員4人からも先任伍長によるパワハラやセクハラの被害を聞き、告発が必要と判断。2人は22年2月、懲戒処分申立書を海上幕僚監部などに送付した。
同9月、警務隊は2人を虚偽告訴容疑で逮捕し、自宅を家宅捜索した。一方、横浜地検横須賀支部は勾留請求をせずに2日後に釈放し、1度の取り調べもなく11月に不起訴とした。
原告側は、相当な理由がないのに逮捕し、警務隊が逮捕時に「弁護士は知り合いがいたら呼べる」と誤った説明をした点などを違法だと主張している。
訴訟での方針について海上自衛隊は取材に「お答えは差し控える」とした。
◆五ノ井さん「一緒に闘いましょう」
元部下のパワハラ被害の告発に動いた男性自衛官は昨年9月の予期せぬ逮捕後に異動となり、今も1日中、業務がなく部屋で座るよう命じられているという。「不起訴になっても対応が変わらない。人間不信で心の病にもなり、何も行動できない状態だった」と振り返る。
閉廷後、横浜地裁前で取材に応じる原告の男性2人
その状況から一転して提訴に踏み切れたのは、陸上自衛隊内での性被害を訴えた元自衛官の五ノ井里奈さん(23)との出会いが大きかったという。
昨年12月、男性自衛官は柔道の指導者に自身の境遇を話し、横浜市内で五ノ井さんが指導する道場を紹介された。一緒に稽古する合間に逮捕された経緯などを話すと、五ノ井さんから「一緒に闘いましょう」と励まされた。「つらい思いをされた若い五ノ井さんが、熱心に柔道の指導もしている。自分も行動を起こさなければ」。元部下に「名誉を回復しよう」と声をかけ、2月に提訴した。
2人が逮捕されたのは、防衛省がハラスメントの実態を調べる特別防衛監察を始めた2週間後のことだった。男性自衛官は「内部での監察はパフォーマンスにしか見えない。裁判で事実を明らかにし、外部の目が入った調査をするなどの変化につながれば」と期待している。(森田真奈子)
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