#16 ジュエリーの「買取り」に思うこと

今現在だと、「買い取り業」ってそんなに特別なことではないですよね。
ひと昔前だと「質屋さん」のイメージもあって、"お金に困った人が駆け込む救済所”という印象があったと思いますが、今の時代はなんといっても"SDGs”。リサイクルが当たり前の世の中になりました。

とはいえ、価値を変えずに代々と物を伝えていくのはなかなかにたやすいことではありません。車にしても、家にしても、あれだけ高額でありながらメンテナンスは必須だし、いざ査定に出そうとすると購入時と同じ、もしくはそれ以上の価値になることは稀ではないでしょうか。
どんなに大切に扱っていても、"劣化”からは免れないのが「物質」というものですよね。

そんな中、比較的その価値を失わないもののうちの一つが「ジュエリー」です。もちろん、宝石の種類によっては耐久性が低く、使用している間に価値が下がってしまうものもありますが(パール、エメラルド、オパールなど硬度が低いものたち)、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、アレキサンドライトなど、使用にも耐えうる耐久性を持ち、更に鉱山の稼働状況などではその希少価値が上がっていく宝石たちもメジャーどころでたくさんあります。
こういった"王道”といわれる宝石たちは、ある程度の品質のものであれば年月が移り変わっても(親→子→孫・・・)価値がそこまで下がるものではありません。

「じゃあ、買ったときの価値そのままのお値段で売れるのね!」
じつは、これが大きな落とし穴。
買い取り業に従事していたとき、よく耳にしたのが
「○○(宝石名)は、今後値段が上がることはあっても下がることはないって言われて買ったの。」
「今、採れなくなって価値が上がったってメディアでやってたわ。買ったときよりも、値段が上がっているはずよ」
といった誤解。

たしかに、お客様がご購入時よりも相場がグンと上がっている宝石も多々あります。査定をしていて、「その頃よりはだいぶ希少価値が上がっているな」という宝石と出会うこともたくさんありました。

しかし、ここに誤解が生じます。

宝石は特に、「相場」に対して販売店が利益を乗せて「販売価格」にたどり着くまでにたくさんの経費がかかります。(宝石に限らずですが・・・)
加工されているジュエリーなら、デザイン料、加工代、管理費など。
ルース(加工されていない裸石)でも、やはり店舗側の利益や販売までの管理費など。

例えば買った当時、販売金額「100万円」だったジュエリーがあるとします。
このジュエリーの原価は「30万円」。
原価「30万円」に、デザイン、加工代、管理費、販売店利益などが上乗せになって「30万円+70万円=100万円」で当時販売されていたもの。
これを、購入してから20年後、買い取り店に持って行く。
買い取り店側が、「これは、今、相場が上がっている宝石ですね。」と言ってくる。
査定金額・・・・
「60万円です!」。

買い取り店側からすると、お客様が買われた当時よりも倍の相場になっている感覚なのですが、お客様からすると「マイナス40万円」「価値が下がった」「購入時、価値が変わることはないって言われたのに」・・・というトラブルになるわけです。
実際は、宝石そのものの相場は上がっている。価値も上がっている。
けれど、「販売価格は販売店が決める」ものなので、その販売店がそのジュエリーにどれだけ手間暇かけて製品化したかによって販売価格は違っているわけです。
分かりやすく言えば、全く同じグレードのダイヤモンドのリングを買おうとしたとき、グレードは一緒なのに有名ブランドとそうでない宝石店とでは値段がゼロ一個分くらい違いますよね。

原価にどのくらい"目に見えないコスト”がかかっているのか。
ここが、ジュエリーの購入時と手放すときとの"ギャップの大きさのポイント"になってきます。

なんだか、途中から話がズレてしまった感じですが・・・。
今回お伝えしたかったことは、持ち主と買い取り側の「価値のズレ」という点です。
またちょっと伝えたかった部分が違ってしまったので、別の機会に欠くことにします。
ともあれ、ジュエリーの査定はどこもたいてい無料でやってくれるので、
「使わないな」と持て余しているジュエリーがあったら、一度査定に持って行くのも面白いです。
そのときは、「その金額では、売れません」ときちんと断る勇気を忘れずに持って行ってくださいね。
売ることはいつでも出来るけど、一度手放したら、二度と巡り会うことはないですから(よほどのことがない限り)。

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