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届かない手

「アリア!」

そう叫んだのは自分。なのだろうか。

記憶の奥。

手を差し伸べるオレ。

届かない手。

辛すぎて忘れることなんかできないと思ってた。
けど辛すぎたから 忘れようとしてしまったのだ、この肉体が。

「マスター。ご馳走様。」

急いでいつもの金額にビール一杯分をプラスしたお金をカウンターに置き
荷物を抱え外に出る。

ありあは どっちに向かっただろう。

右か 左か・・・

右だ!

なんとなくそう感じて走る。

忘れないようにお互いの胸に手を当て名を刻んだ。はずだった。

時の流れのもつ忘却の勢いと 
人間の持つ本能ー忘却ーという作用が働いた。

僕達は 重力を持つ地球では
忘れるということが至極当たり前のこと
だということを分かってはいなかったんだ。

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