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いつか会った

「つまり 石はデータを記憶するってこと?」

「そう。おもしろいでしょ。でもよく考えたら
レコードだってデータの記憶してるし
写真だってそういう事だよね。」

「うん、まぁ。」

「バーコードみたいに刻まれてて 触れることで
そのデータをダウンロードできるんだって。」

「え?誰でも?」

「そう 誰でも。」

そう言って 彼女はまたビールをとても嬉しそうに飲んだ。

「でも。石を触ってそんな風に感じたことないなぁ。」

「分からなくっても ダウンロードは自動的にしてるんだよ。
携帯にもいつの間にか知らないアプリ入ってたりして、入ってるのに
知らない、使えないってことあるでしょ。必要なときじゃなかったり
必要ないものだと そのデータがあっても氣付かないし分からない 
そんな感じ。」

「へぇ。だとしたら僕は結構な情報量をダウンロードしてるかもな。」

「石 好きなの?」

「好きって言うか いつも身近にあったというか。」

父親が 不思議なことを追い求めるのが好きで
石の類はよく拾ってきたり 買ってきたりして 家にはたくさん並んでいた。

「そうなんだね。今まで触れた石のデータは ちゃあんと”ヒロ”のなかに入ってるはずだよ。」


え?

名前 教えたっけ?

あれ? 酔っ払ってるのか?

「なんで・・・名前を?」

「知ってるよー。佐伯比呂。でしょ。」

僕はどこかで彼女に会ったことがあっただろうか?
それこそ 今まで生きてきたデータの中から彼女の姿を探した。

でも 一向にわからない。

「ごめん、僕は覚えてなくて。どこかで会ったんだっけ?」

「んー。ずーっとずーーっと昔に。」

そう言って彼女はまた嬉しそうにビールを飲んだんだ。

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