Twitterと料理

 Twitter時代のTwitterについて書くので、Twitterという名前にする。

 そんな細かいことはさておき、私が2020年までやっていたTwitterアカウントの話をする。
 そのアカウントは子育てや日常のことを発信するアカウントとしてスタートした。知らない人は知らないと思うが、子育て関係のアカウントは一種のコミュニティのようになっていた。

 子育て界隈はいいことも悪いこともあった。私のそのアカウントは存在しないのだから、そこであった純粋な、人とのやり取りについては語るまい。お察し下さいというやつである。
 しかし、今なお思い出してしまうのは、料理のことである。

 以下、主に子育てについて発信していたTwitterアカウントのことを「育児アカウント」とするが、育児アカウントの人達と、レシピの交換や、料理のちょっとした手間を省くアイデアの交換をした。そのアイデアを実践するたび、教えてくれた人、逆に教えてあげた人のことを思い出す。

 例えば、一口大のそぎ切りにした鶏むね肉に塩コショウ、小麦粉をまぶし、バットに卵を溶いて入れたものに絡めて、フライパンで両面焼くチキンピカタは、あの人に教えた。片面を焼いている間に上にチーズをふりかけて、ひっくり返して焼くとカリカリになって美味しい。
 今はチキンピカタ以外のレパートリーが増えたことや、子供が成長して、フライパン一本でできる料理に頼らずに済むようになったこと、あるいは最後の方で、あの人と変な雰囲気になってしまったせいで、我が家でチキンピカタを作る機会がめっきり減ったけれど、あの人はまだ作っているんだろうか、とか。

 あるいは、鶏もも肉に生姜、ニンニク、醤油、酒を揉みこんで半日置き、片栗粉をこれでもかとまぶして揚げ焼きする、山賊焼きを教えてくれたあの人。当時その人に、味付けしておいた肉を平らにして冷凍しておくと、何も考えられない時にそのまま焼けばいいからおすすめだと教えられて、私は今もそのストックを定期的に作っている。あの人は元気だろうか。多分検索すれば、まだTwitter(X)にいるだろうけれど。

 「ポテトサラダは面倒な料理か」論争(今にして思うと、子育て界隈は、つくづくくだらないネタで炎上していたと思う)では、育児アカウントではない、まあまあフォロワーのいた相互さんから、レンチンして簡単にできるポテトサラダを教わった。私はここ三、四年、そのレシピでしかポテトサラダを作っていない。
 ちなみにポテトサラダに練乳を少し垂らすとぐっと美味しくなるので皆さんやってみてね。練乳を垂らすアイデアは、「3月のライオン」から。

 コロナ禍では、「在宅かたいプリン」も作ったなあ。
 あれ、コロナ禍? コロナの頃はTwitterを辞めていた気がするから、「在宅」は単に家で仕事する私のためのレシピと思って作ったような気もする。あるいは、コロナ禍中、ひっそりと情報収集するために運営していたアカウントで、「在宅かたいプリン」のレシピを見付けたんだったか。
 レンジで簡単にできるプリンなので、気になる方は検索してやってみてください。

 中にはよく分からない思い出もある。単なる雑談で、ほうれん草の根に近い部分を食べるかどうか、という話で盛り上がっていた時、ある人が「あそここそ栄養価が高いので、ピンクになっている軸のところまで食べる」と言っていて、私が「へえ……でもうちは食べないや」という風に返したら、その直後その人からブロックされてしまった。
 私が軸を食べないことがそんなにカチンときたんだろうかと、めちゃくちゃ細かいことで思い悩んだが、おそらくほうれん草なんてきっかけに過ぎなくて、その前から私に対して、何か腹に据えかねることが積もっていたんだろうと思う。
 その人と積極的に関係を続けたかったわけでもないのに、ほうれん草を茹でるために軸を念入りに洗っている時に、いつも、もうアカウント名すら忘れてしまった、その人のことを思い出す。
 今は、なるべくしっかり洗って、軸も食べてるよ。

 食べ物の記憶、料理の記憶は、自分が料理を毎日やるからこそ、くり返し私のところにやってくる。
 レシピをくれた人、私が渡した人はどうだろうか。そうやって思い起こしている人なんていなくて、もう自分のものとして定着させてしまっているだろうか。もしその料理を作る何回かに一回、ふっと私のことを思い出してくれているだろうか。
 しかし、もしそうだったとしても、それが何になろうか、とも思う。

 ずっと、このネタを書きたい、書きたいと思っていたのだが、このところ週報日記を書くのが定着していたので書けず仕舞いだった。
 今週は取り掛かっている原稿の大工事と、今季一番の繁忙期のため、ストックしておいたこれを書いておく。

 今週はこんなところで。

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