れかみちゃん

 子供って、白いご飯を食べない。全然食べない。大人なら、味の濃いおかずとご飯を一緒に食べるけれど、そういうこともあまりしない。白いご飯だけが残るので、食事の最後に最終兵器、ふりかけを出す。私が小さい時、親は滅多にふりかけをかけさせてくれなかったなあ、と思いながら出す。娘は鬼滅の刃ふりかけの、どのパッケージのにするか決めるのに、恐ろしく時間がかかる。しのぶさんがいいか、富岡さんがいいか。

 中身は一緒なのに!

 子供も子供じゃないので、こちらがイライラしているのは分かるらしい。気持ちの余裕がある日に、どう決めてるの、と訊いてみたら、「わたしの中から声がするの。その子の言うことを聞いて決めてる。その子、なかなか決めてくれないんだよぉ」とのこと。へえー初めて知った。その子って名前あるの?

「れかみちゃん」

 適当に聞いたのに、その場で考える風でもなく、すぐ返事が来た。れかみちゃんって誰……。

 娘によると、れかみちゃんは人生のありとあらゆる決断をするときに出てきて、彼女を迷わせる。悪い決断をしたり、妹に喧嘩をしかけたりするのも全部れかみちゃんの仕業らしい。自分のやったことを全部自分以外の誰かのせいにしている気もしないでもないが、よく考えたなあと思った。叱る時はれかみちゃんの方を叱ればいいのかと聞くと、彼女は頷いた。

 寝る前の仕上げの歯磨きをされたくなくて、逃げ回っている娘に、「れかみちゃん、もうふざけるのはやめて。〇〇ちゃん(娘の本名)、出ておいで」と言う。効果はあるような気もするし、無いような気もする。ほんの少しだけ、本名で呼ばれるよりは聞き分けが良いような気もする。

 それとも、私までれかみちゃんを悪者にするのではなく、れかみちゃんもろとも愛しているよ、というような振る舞いをすべきなのだろうか。子供がただ戯れに言っただけのことに、考えさせられている。しばらく親子のれかみちゃんごっこは続くだろう。

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