2018年 Shibakawaが考える「鷲のエース」則本昂大のミカタ


「個人的には一番好きなタイプのピッチャーです。気持ちが前面に出る気迫の投球スタイル、彼が投げると、チームに勇気をもたらしてくれるようです。日本代表において、彼にはフル回転を期待していました。先発はもちろん、中継ぎも、抑えも、どんなときでも、どんな場面でも意気に感じて投げてくれるタイプです」

自著『開き直る権利~侍ジャパンを率いた1278日の記録』で、鷲のエースについてそのように綴ったのは、侍ジャパン前監督・小久保裕紀だった。

大卒6年目28歳を迎える則本昂大にとって2018年は、3年契約の2年目にあたる。契約満了の2019年オフにはポスティングを利用したMLB挑戦を球団と話し合う権利が盛り込まれている。

その意味で、今年は大きな1年になるはずだ。
今後の2年間でNPBのキャリア集大成を成就させるためにも、則本に今求められているのは、小久保が評したように「フル回転の献身性」だ。

誤解を生じかねないので丁寧に書いておきたい。
則本は今までも「フル回転」だった。

ここまで大きな怪我なく、キャリアを積み重ねてきた投手も珍しい。
5年連続170イニング以上でチームに尽くし、2リーグ制後では史上16人目となるプロ入り5年連続二桁勝利。
NPB史上4人目で野茂英雄以来となる4年連続ドクターKも、文句なし。
昨年は8試合連続の二桁奪三振でNPB新記録を樹立し、『異次元ステージの扉』を押し開き、僕らの胸を熱くさせた。

選手総合評価指標のWARで言えば、直近5年の合計値が30に迫る投手は、セパ両リーグで則本と菅野智之(巨人)だけである。

そのことを評価しつつも、
それでも僕は物足りなさを感じるのだ。

昨年はWBCで防御率9.82と精彩を欠いた。
チームが大失速した8月中旬からの「魔の20日間」では自身も3戦3敗。
日本シリーズ進出へ王手をかけるはずだったCSファイナルステージ第3戦では序盤から打ち込まれ3回までに5失点、ホークスを目覚めさせてしまった。

プレーオフ含む27試合に先発しながら5失点以上喫したのが7ゲームもあるなど、僕らがまだ物足りなく感じてしまうのは、則本のポテンシャルの高さゆえと、大事なところでなぜか顔を覗かせるこういう不安定な部分なのだ。

それに、二段モーション禁止や怪我から完全復活した岩隈久志、24勝無敗の歴史的レコードで東北を初の日本一にみちびいた田中将大、鷲の歴代エースの系譜があまりにもドラマティックな戦歴に彩られているのも、その一因かもしれない。

高いレベルで質と量の両方を担保し、要所での決戦で確実に勝ち抜く「真のフル回転」を達成するためにも、沢村賞は絶好の目標になる。

初受賞の先には、チーム2度目の日本一が待っている。
2019年オフのMLB挑戦の可能性も大きく開けてくるだろう。
岩隈、ダルビッシュ有、田中、前田健太。
近年、海を渡ったエース級投手は沢村賞のタイトルホルダーであることを考えると、海外FA権取得を待たずしてMLBに行く意向を秘める則本を、良しとしない一部ファンを納得させるためにも、「沢村賞」「日本一」は《MLB行きへの理想の免罪符、通行手形》になる。

ここで田中と則本の違いについて論じたい。

きりりとした表情に溢れる闘志を前面に出し、落ちる球を武器にするという部分でも、両者はよく比較の対象になってきた。

しかし、決定的に違う部分もある。

その1つが、、、

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