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オリジナルグッズのギャンブル性

動物園や水族館、博物館のショップで、オリジナルグッズが充実しているのを見ると、とても羨ましく思う。

オリジナルグッズは寄付金付きだったり、思い出としてお部屋に飾ることでリピーター力の強化につながったり、運営方針に合致した普及教育効果を兼ね備えたものを作れたり、お土産として皆に配られることで来園動機の拡散を行えたりと、いいことずくめである。何より売り場が華やかである。

買い手側からしても、どこにでも売っている既製品とは違う、というところで特別感や購買意欲が湧く。

が、一般的に大きな施設のオリジナルグッズは高品質かつ品ぞろえも充実していて、地方の小施設の場合はそうでもないことがほとんどである。

これは商品の企画力の差もあるが、客単価の差と入園者数の差が大きいと考える。

入園料が千数百円~数千円する施設で、価格に見合った展示を楽しんだ後だと、千円程度のお土産を買うのはほとんど抵抗がないだろう。数年に一度くらいしか訪れられない有名施設に宿泊込みの日程で訪れているのなら尚更である。
これが数百円で入れる地元の施設だとそうはいかない。入園料が安いというメリットを感じている施設で、入園料以上の買い物をするのは非常にハードルが高いのである。

また、入園者数については、集客域と購買者数に直結する。前述の通り、地元の施設でお土産を買いたいと思う客はそうそういないだろう。
数で言えば、購買者数が多く見込める施設であれば、オリジナル商品を企画し、製造元に発注する際にも、ロット数が大きくなるので商品単価は安く済む。
小施設で同じことをやろうと思うと、どうしても少数ロットで発注するので商品の単価は高くなる。なおかつメインが地元民相手なので売れ残り、在庫抱えることになりがちである。賞味期限がある商品の場合、不良在庫を職員が買い取るようなことさえ起こるのだ。
(これを解決する一案として、日本動物園水族館協会(JAZA)がオリジナル商品群を企画して加盟園館から受注を取りまとめ、ニッチな動物種であっても単価を落とすという方法もあるだろうが、公益社団法人であるJAZAがそんなリスクを背負いたくはないだろう。)

ここで会計区分の問題が別にある。施設の維持管理にかかる予算を一般会計、商品やフードコートでの売り上げを特別会計で賄っている施設の場合、特別会計の損失を一般会計で埋め合わせることはできない。なんとか特別会計内で少しでも黒字化するよう努力しなければならないのだが、ではそこでもっと別の魅力的なオリジナルグッズを――と考えるのは愚かな思考である。パチンコの負けをパチンコで回収しようとするようなものだ。

というわけで、地元民を主な顧客にしている地方の小施設では、オリジナルグッズにほとんど力を入れることができず、既製品のぬいぐるみや文房具やガチャガチャに終始しているのである。「いいものを置けば売れるんだ!」という熱血社長みたいなコピーは通用しない。
決して何も考えていないわけではない。何も考えていないわけではないし、いろいろなオリジナルグッズが欲しいと思っているのであるが、結果としてそうなってしまうのである。

それを、地方の小施設は工夫不足だ、努力不足だと一蹴されるのは極めて遺憾なのである。

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