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言語学ってなに?小学生でもわかるようにわかりやすく解説してみた。

「言語学」と聞いてどんなイメージを持つでしょうか?

「そりゃ言語を研究する学問でしょ!」
「言語の変化を調べる学問!」
「音とか意味を調べる学問!」
「英語を効率よく学習できる方法を考える研究!」

様々なイメージが湧き出てきますが、なぜ言語学はこんなにもたくさんの研究対象があるのでしょうか?そしてそもそも言語学とはどんな学問なのか?

今回は、言語学という学問の全体像を、イラストを用いながらわかりやすく説明していきたいと思います。

「言語学」を辞書で調べてみる

手始めに辞書で「言語学」と調べてみましょう。

げんご‐がく【言語学】
(linguistics)人間の言語の特性・構造・機能・獲得・系統・変化などを研究する学問。音韻論・形態論・統語論(統辞論)・意味論・語用論などの分野がある。

広辞苑

うーん、言語学の研究対象が様々あることはわかりましたが、言語学そのものについてはよくわかりません。

次に、「言語学」という日本語に相当する"Linguistics"という英語の意味を調べてみましょう。

lin・guis・tics | /lɪŋˈɡwɪstɪks/
the scientific study of language and its structure, including the study of morphology, syntax, and semantics.
(言語とその構造を対象とする自然科学。その研究には、音韻論・統語論・意味論を含む。)

New Oxford American Dictionary
( )内は作成者による翻訳

余計難しくなってきました…。とにかく、「言語学」という学問の内部には、様々な種類や分野があることがわかります。この言語学の多様性が実は重要だったりするのです。

言語学とは何なのか?

それでは言語学の説明をします。

言語学の定義はズバリこうです。

言語の「いろいろな側面」「いろいろな角度」から研究する学問

イラストにしてみるとこんな感じ。

図解の通り、言語学を「側面」「角度」という2つの軸で捉えることができます。

例えば、「言語の側面の」例として「音」を考えてみましょう。この側面に対し、様々な「角度」から研究することができます。例えば、「発音の変化=歴史的な角度」、「方言による発音の違い=社会的な角度」、「発音(調音)の仕方=生物学(解剖学)的な角度」のような感じです。

このように、言語学は「側面」だけでも「角度」だけでも捉えることができず、2つの軸があって初めて言語学を体系的に説明することができます。

今回のポイントです★

言語学とは、
言語の「いろいろな側面」「いろいろな角度」から研究する学問


補足説明&専門的な話

ここまでは非常に簡略化した言語学の説明をしてきましたが、以下では専門的な話をしていきます。興味がある方はぜひご覧ください。言語学の学問的な性質に対する理解が深まると思います。

その1:内的言語学と外的言語学

上記で、言語学を「いろいろな側面」と「いろいろな角度」という2つの軸から捉え、その軸に従った言語学の種類の代表例を紹介しました。2つの軸に従って分類された言語学にはそれぞれ名前がついています。「音」「構造」「意味」という「側面」の軸から捉えられる言語学を〈内的言語学〉と呼び、「角度」から捉えられる言語学を〈外的言語学〉と呼んだりすることがあります。

その2:言語学の複雑さ1

補足説明ですが、言語学の種類や分類は上記の図解で全てではありません。特に「いろいろな角度」から分類される〈外的言語学〉には、もっともっと多くの言語学の分野が含まれます。また、言語学には非常に多くの下位分野が存在します。例えば、「意味」を扱う〈意味論〉でも、私が知っているだけで〈形式意味論〉〈認知意味論〉〈概念意味論〉〈可能世界意味論〉〈生成意味論〉〈フレーム意味論〉などの立場が存在し、それぞれ(似たりよったり、または上下分野の関係性にあったりすることはありますが)「意味」に対して異なる立場を取っています。

その3:言語学の複雑さ2

上記の「その2」で言語学の内部に様々な種類やジャンルがあることがわかりましが、それらの境界線は明確ではありません。むしろ互いに重複(オーバーラップ)していることのほうが一般的です。例えば、「音」「構造」「意味」という3つの言語の性質(側面)は互いに無関係のように感じるかもしれませんが、実はそれぞれ相互に重複している領域があります。例えば、「少年野球」と「野球少年」。これら2つの語は、「構造」と「意味」の両方に関する問題です。また、「角度」という軸に目を向けてみると、1つの角度だけが採用されることもあれば、複数の角度を組み合わせて言語を研究することもあります。例えば、〈認知歴史言語学〉という「認知」と「歴史」という言語に対する2つの分析角度を採用した言語言がありますが、これは「言語の変遷(≒歴史)を人間の認知から動機付ける(説明する)言語学」です。図解では良くも悪くもシンプルに見えますが、実際のところは当然ですが複雑です。図解はあくまで図解ということをご了承ください。

その4:そもそも言語とはなにか?という問い

これが最重要なお話です。今まで言語学についてあれこれ説明していましたが、1つ重要なことを説明するのを【意図的に】避けてきました。それは「そもそも言語とはなにか?」という問いです。普通、「言語学=言語を研究する学問」ならば、その目的語にあたる「言語」について紐解いていく流れが自然のように感じるかもしれません。しかし、残念ながら現代の言語学では「言語とはなにか?」という問いに対して唯一絶対の正解は出ていません(そもそも出そうとしていないかもしれません)。参考までに、どのような言語の捉え方があるのか紹介しておくと、「コミュニケーションのための手段」「歴史的産物」「アイデンティティ」「社会的制度」「形と意味による記号体系」「脳内で行われる計算に基づく出力」「内的思考」などなどがあります。そして、これらの言語の捉え方(言語観)は、どの角度から言語を研究するかによって異なり、したがって唯一絶対の言語の定義を提示するこてとはできないのです(主流な言語観などはありますが)。これらのことを踏まえて言語学の学問体系を考えると、「言語とは何かを突き止めるために研究するぞ!」というよりは、「言語をこの角度から研究してみよう!」というノリで言語学は進んでいます。これが、現代自然科学の代表例である物理学や数学と大きくことなる特徴であり、言語学という学問の多様性や学際性を生んでいるのだと思います。


最後までご覧いただきありがとうございました。

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