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顔出しする?オンライン会議での葛藤

オンラインミーティングで自分の顔を出すか出さないかは、アメリカでも微妙な問題だ。

私の勤めているスタートアップ企業でも、COVIDの初期の頃は、全てのミーティングで皆基本は「顔出し」をしていた。しかし、次第にそれに不満を漏らす人々が出てきた。曰く、「疲れる」、「鬱陶しい」、「どこを見ていたらいいか分からない」等。すると、ある日CEOが「全体ミーティングでのビデオオン(顔出し出席)は強制しない」と通達を出した。

これにYippee!(やったー!)と心の中で叫んだのは、多くのエンジニア達と、内気な人々であった。これらの種族は、自分が積極発言しなくていい会議は他の事をしながら出席したい、別に上級幹部に阿(おもね)る必要はないしやる気もない、と思っているからだ。とにかく、無駄でストレスフルなことは避けたいのである(筆者もその一人)。

一方、長時間のミーティングでも顔を出して臨む人々もいる。一部の「どうでもいいや」という手合いの他は、上昇志向の高い人々。とにかく、上級幹部に顔と名前を覚えてもらって絡みたい。幹部の言うことには、大げさにうなづく。幹部へのお世辞をちらりと交えたコメントを繰り出す。どうでもいいような質問でも必ず1回はする(鋭い指摘・質問であることもあるが、大抵は他の人々に自分を印象付けるためのもの)。そういう人々は、いわゆる「常連」で、他の出席者も「またか」という感じで生暖かく見つめる。

先日も、ある上昇志向と自己承認欲求高めのディレクター(課長クラス)Sが、質問をした。その全体会議では、新任の上席VP(本部長クラス)が複数出席していたのだ。Sは「私は、〇〇部の〇〇長のXXです。部署では〇〇をやっており現在の課題は〇〇です。さて、質問なのですが...」と誰の記憶に残らないような瑣末な質問をした。

他の”常連”は、部下のマネージ能力に欠けていたため、「遊軍」(一人の部署)に格下げされたシニアディレクターのAだ。自分と同レベルのマネージャーの発言には、「お、そうきたか」とか「それは、鋭い!」とすかさず突っ込み笑いをとる。上級幹部の発言の後では、お世辞を交えた質問かコメントを欠かさない。Aは、社内のコミュニケーションツールであるSlackでも、同様の努力を日々続けている。(しかし、この厳しいご時世に彼の必死さを誰が笑うことができようか。明日は我が身である。)

一方、日本では「その場の雰囲気で(顔出しかどうかを)決める」という人が多いと聞いた。画面を見ていて、顔出しをしていない出席者が多ければ、自分もビデオをオフにする、といことらしい。周りの雰囲気に合わせる、というところが日本らしいと思う。

日本ほどではないが、アメリカでもそういう人々はいる。ちなみに筆者は、プレゼン資料が多い全体会議では、最初と最後の部分(プレゼンモードになっていない時だけ)顔を出すようにしている。勿論、本当に必要と思われる質問はするし、いいねアイコンを押したり、チャット欄に「Great Work!」と書き込んだりもする。孤高のエンジニアのように潔くはないが、まぁその辺は日本人なのでご勘弁を...。(”ビデオオフ”にするタイミングを考えちゃったりする小心者なのだ。)

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