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ジェームズ・ボーエン『ボブという名のストリート・キャット』『ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2018.12.15 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

実話を元にした映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』。何の気なしに出会った映画だったのですが、茶トラのボブがあまりに可愛くて、原作本が世界28カ国以上で翻訳出版され、続編2冊を合わせると、計1000万部を越える大ベストセラーだと知り、思わず手に取りました。私自身が、基本的に映画と原作本では原作本に軍配を上げるタイプなのもあって、しかも、ボブ役を演じ(?)ていたのが、実際のボブだと知り興味津々、かなり期待してむかった原作本でした。

読み終えて率直に感じたのは、原作本はノンフィクションなのだということでした。丁寧に、ありのままに、ホームレス&薬物依存症のストリートミュージシャンで、行き先も見つけられなかった青年が、野良猫との奇跡的な出会いで、人生を取り戻していくまでを描いています。
『ボブという名のストリート・キャット』で語り尽くされなかった、読者の知りたかった部分も、続編『ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険』で補足されていて、ノンフィクションとして納得の仕上がりになっていました。(映画もこの二冊から材料を得ていました。)

では、原作本との勝敗は……!? 映画が、主人公だけでなく、周辺の人間たちがとても魅力的に描かれ(原作とは違ってかなり人物に脚色がなされています)、また、ホームレス生活からスタートするドラマチックなストーリー展開が用意されていたので、映画に軍配を上げたくなりました。と言いながらも、今回はむしろ、ノンフィクションが小説(少なからず読者への何らかのエンタメ的要素を持つ)とは全く違ったもので、小説と映画のような比較ができないのだ、ということを改めて実感する読書体験だったとの思いが強いです。どうやら、ノンフィクションの映画化の場合は、原作本→映画の順で出会うのが、両方を楽しみきる秘訣のようです。

ともかく、原作本も映画も「セカンドチャンス」というメッセージは変わりません。多くの人々の指示を受けている理由もそこにあるのでしょう。

写真はビッグイシューHPより

ジェームズのセカンドチャンスの第一歩となった、ホームレスの人の仕事をつくり自立を応援する『ビッグイシュー』が日本にあるのも初めて知りました! ちょうど最新号がまさかの「猫のボブ」の表紙で驚きました! スペシャル企画「ボブから学んだ5つの人生哲学」も掲載されているようです。