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町田康『パンク侍、斬られて候』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2020.12.26 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

設定も、登場人物も、物語も、全てが文字通り「パンク」な小説でした。

土地に災厄をもたらす新興宗教的な「腹ふり党」の話題が出てくる初っ端から、「どういうこと~???意味不明~⁉w」と突っ込み所が満載! 読み進めば読み進むほどその馬鹿馬鹿しさに拍車がかかっていき、とにかくぶっ飛んだパンクっぶりなのですが、そんな中にも、「大衆」とは、「インチキ」「欺瞞」とは、「悪」とは「正義」とは、「この世」に存在する「罪」とは、などちょこちょこと世の真理をついていくようなワードが挟まれていきます。その他にも、人間の中に棲みついた「化け物」、馬鹿げたことに伴う「愉悦」、「虚妄の現実」、そして、「猿回し」を象徴的に用いた人間と猿との逆転劇など、立ち止まらせる要素が散見するもので、なぜかやめられず、ずっと引っ張られるように読んでいきました。玉石混淆感というか、一筋縄ではいかない感じが面白い小説で、時代小説っぽい設定ではありますが、いわゆる時代小説を期待すると間違いなくボディーブローを食らうことを保証します(笑)。

このパンクな原作が、宮藤官九郎脚本✖石井岳龍監督✖綾野剛主演で2018年に映画化されているようです。原作では、すっぱすっぱ斬っていきますし、腹ふり党との戦いの場面など、殺戮ぶりも激しく、このままだとかなりエグい映像になりそうですが、さて、どんな料理具合になっているのか……。出演俳優陣も豪華で、「予告編」よりもむしろ「メイキング映像」にそそられるものがあり(笑)、好みはかなり分かれそうな映画ですが、怖いもの見たさも相まって、観たくてたまらなくなっています!