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朝井リョウ『発注いただきました!』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2020.03.08 Sunday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

デビュー10周年を迎えた朝井リョウさんの最新刊『発注いただきました!』

これまでに、企業とのタイアップや他の作品とコラボして書いた文章を集めた作品集なのですが、「はじめに」で以下のようにコンセプトが示されています。

作品をそのままずらりとコレクションしただけではあまりに詐欺めいているので、それぞれ、【(1)どんな発注を受けて書いた作品なのかを提示(テーマ、枚数など)】→【(2)作品】→【(
3)発注にどう応えたのか、答え合わせ】という順番で掲載すれば、全体の構造として(主に私が)より楽しめるのではないか、と考えた。この一冊を読み終えたころには、皆さまにも、タイアップ作品二十本ノックをやり終えた感覚を味わっていただけることだろう。そもそも味わいたいかどうかは別にして。

一番のオススメは、やはり新作の「贋作」です。

贋作が贋作であり続けるために、装うことで何かを傷つけていくという真実。そんな贋作を贋作と見破るものもあれば、見破れずに贋作を愛でるものもある。しかし、真実を手にいれたからと言って人は救われるのではないし、贋作から救われる人もある。どちらも世の中に確かに存在している事実だけがあるのであって、何が誰にとっての救いとなるのかなんて分からない……。

進化しつつ、また、朝井リョウ的毒は変わらない、そんな10周年記念短編でした。

朝井リョウさんのファンとしては、書籍化されているものについては既読のものもあったのですが、キャラメルやビールなどの商品購入で読むことのできる、短い連作小説などはこの試みでもないと手に取ることができなかったので、嬉しい10周年企画でした。とはいえ、『ノベルアクト2』掲載の小説などは掲載されていなかったので、許可取りなどの関係で収められなかった作品がまだ残っているのでは……!? と気になってしまいました。(笑)