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小学生|学童保育 俳句作りの実践

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2021.05.03 Monday)に掲載された内容を転載しています。
参照元:http://info.e-nhkk.net/

nhkk事務局スタッフ:
東京で学童保育に携わっている河野しんじゆさんからの実践報告です。


河野しんじゆさん:
東京に来て2年と少し、学童保育に携わって6月で丸2年になります。

学童保育で俳句を子供たちと楽しめたらいいなと思っておりましたが、チャンスの無いまま、コロナ禍になってしまいました。

緊急事態宣言が出ていて休みだった学校が始まり、夏休みとなっていく中で、子供たちを集めずに何かできないかと考えました。(学童保育が休みのままでは、働く保護者が困りますので。)当時東京都では公園の遊具も封鎖され、もちろん歌うことも出来ないような生活でした。

そこで、投句する俳句なら施設の壁に貼っておしゃべりをせずに出来るのではと、階段の壁を私に任せてもらえることになりました。

一日一句というコーナーを作り、俳句のルールと音数の数え方など簡単に書き張り出しました。

初日の句を大短冊(A4コピー用紙縦半分に切り4枚張り合わせた)に書いて張り出したら、吾も吾も!!と人気になりました。

一日目はヒーローの句を見本的に私が作り貼り付けました。(人気の指導員の言葉をそのまま句にして、指導員の名前を借りて出しました)

最初に始めたころは、手書きの張り紙の575は、当初は「音」でなく「文字」としていました。わかりやすいかなと思って「文字」にしたのですが、今はやはりダメだなと思い「音」にしています。

それから右側へ一日一句、投句の中から選び貼りだしていきました。それからだんだん増えて、スペースがなくなりヒーロー句の左側にも一句あります。(なんとほかの指導員の句です。)

句としてはまだまだ???なものでしたが、自分の句が大きく書かれてうれしかったようです。

それで夏休み中ずっと続けられました。

俳句を作るさいに、私から子どもに配ったものはなく、手書きで壁に貼ったのを見て子供が勝手に勉強してくれました。また、職員が非常に熱心に俳句に取り組み、個々に子供に伝えたのも良かったと思います。

大短冊は学童の会社で行われたフェアで飾られたりもして高評価を得ました。(個人情報の点で保護者の了解の得られた句だけの掲示でした)

大きな短冊という形は前職(3年ほど)の就労支援A型という障がい者の就労支援の会社で障がい者(身体、知的、精神障害)と俳句作りをしていた時に思いつき、仕事場の入り口に貼りだしたところ彼らや保護者の方の励みになり、会社を訪れる人々にも良い印象を得た経験を活かして発想しました。(俳句は短い文なので障害のある人たちにも取り組むことができ、今でも一句一遊に投句している人がいます。)

次の投句です。2週間ほどかけて投句させ、投票によりほかの子供たちや保護者の方に選んでもらいました。少し上手になりました!

夏休み中盤になると施設の館長さんなどにも好評で、ずっと続けようという話になりました。

夏休み明けより期間を区切って投句➡選句➡投票➡表彰という形にしました。季語も少しずつ紹介し、ひっそりとしたコロナ禍の運動会なども俳句の上では楽しそうに描かれました。

区切りごとに施設に来る子や保護者で投票を行い、一位には表彰状を出しました。この頃から簡単な選評を付けてどんなところが良いので選ばれたのかを書きました。もちろん興味のある子供だけです。ずっと短冊が張られていても俳句って何?という子もいました。

三月の句です。最初のころと比べると皆上手になっています。

短冊の下に書いてある紙は、選評です。どんなところが良くて選ばれたのか書いてあると、それを読んで子供たちが勝手に学んでくれました。(コロナ禍で子どもたちを集めることはできませんでした。)

最初短冊を返す時に選評を書いて渡そうとしたら、当時の施設長さんに、それが投票時に貼ってあれば良くわかるのではないか? と提案があり、こう言う形になりました。

この短冊と選評は保護者の方にも喜ばれました。

後半からは、おしゃべり俳句(※)で子供たちの心の中を俳句にして、ぐんぐん上達していきました。

一年生中心なので字を書かせるだけで大変ですが、おしゃべり俳句のカウンセリング的な聞き取りが嬉しいようで楽しみにしてくれる子もたくさんいました。悔しい句、さみしい句も俳句になりました。

学童もキッズも毎日くる子だけではないので時間が限られているのがむつかしい所ですが、延長と言われる遅い時間に、子供達も心許してお話をしてくれることがあり、私もその時間に子供と俳句ができるのを楽しみにしていました。

施設長と話し合い、ここの学童では文集などもないので一人一人の句集という形にしようと決まりました。投句の紙は取ってあったので短冊をコピー用紙に張り付けての(字が汚いのが残念でした)句集でした。

意外にもその子の字の変化や言葉の上達など成長が見られてかわいらしかったです。最後には表紙に題と絵を描き立派な句集となりました。(年度末でバタバタと配ってしまい、写真に残せていません)

五月より新しい年の俳句が始まります。句集も一人ごとに作るように決まりました。きっかけはコロナでしたが、これからも子供たちと俳句を楽しみたいと思っています。


nhkk事務局スタッフ:
しんじゆさん、実際にふれあうことができなくても、俳句を間におくことで繋がり学び合うことのできる新しい学童保育の提案的実践をありがとうございました。

「おしゃべり俳句」については、nhkk副会長・夏井いつきのYouTube「夏井いつき俳句チャンネル」でも紹介されています。


■日本俳句教育研究会(nhkk)
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