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中学生|主体的・対話的で深い学びを実現する俳句の授業 コロナ禍におけるICT活用の実践①

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2022.04.06 Wednesday)に掲載された内容を転載しています。
参照元:http://info.e-nhkk.net/

nhkk事務局スタッフ:
東京都立大泉高等学校附属中学校の石鍋雄大先生より届きました実践報告をご紹介いたします。

2021年1月に3回に分けてご紹介しました「中学生|身体で季語を感じよう オンライン句会の実践」の続きの実践ともなっております。
本日より3回に分けてご紹介いたします。


石鍋雄大先生:

はじめに

 現在、社会は歴史上類を見ない早さで変化しており、未来を生き、未来を創り出す生徒たちには、その変化に対応できる教育が必要とされている。そのための一つの視点として、中学校では2021年度から、高等学校では2022年度から実施される新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」がキーワードとなっている。

 国語科としては、目標や課題の解決に向けた、他者との協働を通して、言葉とその効果について考えることで「主体的・対話的で深い学び」を実現しようとした。

 その中でも特に、俳句を教材として扱った実践を紹介する。俳句には思いやイメージを効果的に伝達するために多彩な言語技術が使われていることや、比較的短いため生徒に多くの作品に触れさせることができるなど、学習に適した特徴があるためである。また、生徒達に詩歌への一定の抵抗感が見られることも実践の契機となった。俳句自体は好きな生徒たちであるが、多様な解釈が可能となる詩歌は、定期考査などで問われる一つの「答え」が見出しにくく、なんだかよく分からない、何を学んだか実感しにくいといった感覚があるようだ。

 そこで、俳句を用いた「主体的・対話的で深い学び」を実現することで、生徒が俳句などの詩歌に親しむための素地をつくること、他者と協働しながら確かな言葉の力をつけることを目的とし、本実践を行った。


実践 オンライン句会と句集『句×句=120』を出版しよう

 『句×句=120』は、生徒達が作成した句集の名前である。

 本実践は、選句や作句だけでなく、上記の句集名の決定から、本の校正・編集までを生徒を中心に取り組んだものである。第1時の授業は12月に行った対面学校での授業であるが、第2時以降は東京に緊急事態宣言が発出されたことにともない、オンライン授業を中心に行っている。

 本単元の目的は、一語を深く理解し、創作や解釈に生かすこと、どのように鑑賞したかを交流することで他者と深い部分で繋がりをもつことであった。コロナ禍でクラスメイトと会えず、行事も中止になってしまった2020年度、思い出に残るものを提供できないかと考えて行った実践でもある。

(1)授業概要 

①授業の流れ

[1] 六角成分図とは、五感+連想力で季語を分析するためのレーダーチャートを指す。(2018)『夏井いつきの季語道場』NHK出版

②ICTとの関係

 本校では、2021年4月には全生徒にタブレットの貸与を行っているが、本単元の段階でのICT環境は各家庭の状況に依拠しており、リアルタイムでの授業の視聴が難しい場合があった。また、個人情報保護の観点より、オンライン授業時に生徒の顔を表示することや呼名は行っておらず、生徒との相互のやりとりは作品やMicrosoftTeamsへの書き込みが中心となっている。

 オンライン授業は動画配信を行い、感想や小テストをMicrosoftFormsで作成したアンケートフォームで回収する形で行った。句会も同様にMicrosoftFormsを使用していたが、途中から運用のしやすい「夏雲システム[2]」に切り替えた。

 句集の内容は、既にある俳句から三句を選び、評を付ける活動と、自分たちで俳句を作り、評を付け合う活動の二つに分かれる。前者の元となる俳句はMicrosoftOneNoteという共同作業ができるアプリを使用して全員で収集した。後者は、教員の側でワークシートのようなフォーマットを作成し、そこに生徒それぞれがデータを打ち込む形で作成した。

[2]「夏雲システム」は野良古が運営する無料の句会作成サイトである。登録することで、投句・選句・評まで句会を自動で進めることができる。
https://nolimbre.wixsite.com/natsugumo〕(最終検索日:2021年8月18日)



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「俳句」を教材とした様々な教育の可能性を研究する日本俳句教育研究会は、「俳句」を教材に教育活動を展開しようとする教師や俳句愛好家の情報交換の場になりたいと活動する任意団体です。

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