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金木犀

あっちへ行っても金木犀。こっちへ行っても金木犀。様々なお店で目にする季節となった。甘くて華やかな香りに吸い寄せられるように、気づけば私はそれの前に立っていた。秋の香りに心奪われ、芳香剤とヘアセットジェルを購入した。
これで私もいい女。

🍋🍋

ヘアセットジェル、買ってしまった…。そんなもの使ったことないのに。普段は適当なオイルを手につけ、ちゃっちゃっちゃーっと毛先に馴染ませるようなセットしかしない。はて、一体どうやって使うのだ。次の日、早速使ってみることにした。

蓋を開け、ジェルを出す。おーっと、しまった。
どのくらい出していいのか分からず、500円玉位出てしまった。しょうがない、もったいないからつけてしまおう。
これが悪夢の始まりだった。
とりあえず全体につけてしまったそれはしっかりと存在感を放っていた。
べっちょべちょのパラッパラ。
がっつり束感、汗かき濡れ髪ヘアの完成。まるでお風呂上がり。いや、もっとひどい。傘をささずにダイレクトに受け止めた雨の日ヘア。
なんてこったい。難しすぎないか?
参考写真のモデルはおしゃれな髪型でキメているというのに。
ムムム。難易度高すぎる。
どうしようと焦った私はドライヤーをあててみたり、アイロンで伸ばしてみたりと試行錯誤を試みたが、結局海苔のようにしかならなかった。

どうしようもない。結果、散々弄ばれた髪の毛達は、ゴムで1つに束ねられポニーテールとなった。
せっかく気合いを入れたのに。
ドライヤーもアイロンも普段よりずっと長い時間触っていたのに。改善される事はなかった。
修行が足りんな。

🍋🍋

さぁ、家を出る時間だ。靴を履こうと玄関にしゃがみ込んだ。ふわっと香る甘くて華やかな香り。
優秀である。
今日は一日この香りに包まれて上機嫌でいられる。ちょろいな、私。
しっかり自分をいい女だと思い込むことに成功し、玄関の扉を開けた。

金木犀、様々である。

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