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「神風」が吹いた夜

深夜1時52分。
玄関外の門扉から、カタンと音がした。
さらに、ガレージに吊るしてある風鈴が、何度も強く鳴った。
普通に就寝中であれば、気づくこともない音だろう。
深夜から早朝にかけて執筆作業中であることの多い、夜行性ライターの私は、今夜も1階のダイニングでPC作業中だったので、すぐに音に気づけた。
ただそれだけのことのはずだった。

でも、何やら胸騒ぎがして不審に思った私は、念のためすぐに玄関を確認。
すると、あろうことか戸締まりができておらず、上下2つの鍵が開いたままになっているではないか。
これはアカンと、慌てて施錠。
ここで終わるはずだった。

しかし、私はさらに嫌な予感がした。
なぜなら、夕方に私が帰宅したとき、ねずみ問題で改修中のガレージと隣接している部屋のガラス戸が開いていた気がしたからだ。
ガラス戸が閉まっていなければ、玄関の施錠ができていたとしても、簡単に屋内に侵入できてしまう。
えらいこっちゃな状況である。

一刻も早く確認して閉めなければならないと思いつつ、万が一こんな真夜中に、網戸を1枚隔てただけで不審者と遭遇したら、危険なことこの上ない。
どうしても動けなかった。
テレビをつけて音量を上げたり、引き戸が簡単に開けられないよう物を置いたりしてみるも、施錠できないので意味がない。

時間も時間なので、ガレージと隣接の部屋を私ひとりで確認しに行くのは、正直ものすごく怖くて、非常に申し訳なく思いつつ、110番通報を決意。
玄関とガレージで、不審者が侵入しようとしたかもしれない物音と気配を感じたと伝え、パトロールに来てもらうよう依頼した。

ほどなく、警官3名が到着。
状況を説明するも、結果的に不審な人影は見当たらなかったので、たまたま風で門扉と風鈴が鳴っただけの可能性が高いのでは?と言われた。
もちろん、その可能性は大いにある。

おまけに、玄関の施錠忘れ+ガレージに隣接した部屋のガラス戸が開けっ放しという明らかに不用心な状態だったわけだから、何の反論もできない。
申し訳なくて、うっかりしていて不用心だったことを丁寧に謝った。

それにしても、私が不思議でならないのは、いたって静かな夜中に、たとえ一瞬であっても突然そんな風が吹くなんてあるんだろうかってこと。
強い風が吹くときって、部屋の中にいても結構わかるものだから。

不審者が侵入しようとしたのでないのであれば、ねずみ問題で神経がまいっていて不用心な状態に気付いていなかったわが家に、どうにかして注意喚起をするため、神様がまさに「神風」を吹かせてくださったに違いない。
私にはそう思えてならないのだ。神様に感謝。

実は、私が夕方に帰宅したときに、今回の件の予兆があった。
玄関の鍵は1つしかかかっておらず、改修中の部屋は網戸になっていた。
1階の部屋は電気もテレビもつけっぱなしで、母の姿だけがなかった。
近所に散歩に出かけていたらしいのだが、朝からいろいろ様子がおかしかった上に、帰宅後も手の動きがおかしく、お茶や水を何度もひっくり返す。
母には、月曜に受診するよう勧めていたところだった。
そんなことが続き、夕食の前後にはひたすらダイニングの床を拭きまくっていたので、2人とも玄関のことをすっかり忘れていたのだと思う。

結局、深夜の物音が不審者だったのか、はたまた風によるものなのかは確かめようがないけれど、不用心すぎたことと、深夜に110番通報でお騒がせしたことを反省。
戸締まりと火の用心には、くれぐれもご用心を。

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