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「こんばんは」 彼はそこにはいなかった わたしの見間違いか、いや違う 確かに彼の影を見たの…
(7) あの人との出会いから別れまで、まだ温い痣もかさぶたになった傷も、一通りの出来事を打…
(6) 雨上がりの夜、わたしは胸の内の鍵をそっと差し込んだ。長年陽射しの届かなかった扉の中…
(5) 晴れた日の夜、ひときわ輝く雲を見かけたら、きっとそこには立派な、月の王様の建てた宮…
(4) ティンカア・ベルが夜を誘い始める頃、わたしはチカチカと電飾のまたたく小さな市電から…
(3) わたしが四十と八つのフォーチュン・クッキーを平らげようとしていた頃、街では狼の長…
(2) 埃ひとつない調度品が並ぶ書斎に、うずくまる猫。あかあかと薪が爆ぜる古暖炉。そこに一匹の黄色い蝶が紛れ込んできて……。 あたかもそこが自分のベッドであるかのように、蝶はひらひらと戸棚のほんの10センチのスペースに腰を下ろした。猫型の黒いブックエンドが、蝶を狙っているとは、その時知る者はいないだろう。