どこかのせかいの絵本の一場面より
(3)
わたしが四十と八つのフォーチュン・クッキーを平らげようとしていた頃、街では狼の長が港の船長と話をつけようとしていたって。
どうやら、狼たちは肉だけじゃなく美味い魚が食べたくなったらしい。だけどもね、狼は魚を捕る術がないし、誤って海で溺れたりしたら大変だからって、港で少し魚を分けてもらおうとしたって。
そうしたらね、船長がなにやら閃いた顔をして言ったみたい。
「最近、山の向こうの村では猪や猿が暴れてる。そいつらに村を襲うのはやめてほしいと伝えてくれ。その代わり獣たちが住みやすいように、山の木は伐採しないからと」
狼は喜んでその案をのんだらしい。それから船長は、船員たちと約束の魚を、たあんと狼にやったって。その時、遠吠えで仲間を呼んだのだけども、山から駆け下りてきた狼たちが多いの何の!
船長も船員もびっくりたまげて腰を抜かすものもいたんだとか。
今では美しい山と伝統のある村と、狼と共に生きる港の人々はどこでも知られていないけど、どこかの国といつかの時代の、不思議な不思議な物語。
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