見出し画像

オンライン授業を行うための環境設計について考えてみた(日本語学校編)

新型コロナウィルスの影響で、リモートやオンライン授業について、いろいろな情報が公開されています。一気に様々な情報が飛び出してきて、追いかけるのがちょっと大変なくらいですが、記事を読んで、新たな発見があったりして可能性の広がりを感じています。このタイミングで、多様な学び方が認知されるともっと教育に広がりができるのではないかと、ワクワクしました。

一方で、日本語学校(日本語学習)についての情報が少なかったので、これまで試行錯誤しながら得た知見が役に立つのではないかと思い、この機会にまとめてみることにしました。

* * * * * *

と、まとめ始めたのですが、この記事、着地点が見えず、中途半端な記事になってしまいました。その点をご承知おきの上、使えるところは使おうというスタンスでお読みいただければと思います。

* * * * * *

私が勤めている日本語学校では、ITエンジニアを育成するというコンセプトのもと、プロジェクト型の授業を行っており、紙ベースのテキストは使っていません。以下に挙げるような条件で授業を行っていますので、かなり恵まれた環境にあるのではないかと思います。

・学生全員がPCを所持している
・学生全員が常時wi-fi環境にある
・学生全員が、PC操作、その他のツールの使い方に慣れている
・日本語入力に問題がない(抵抗がない)
・コミュニケーションツールとして、Slackを使用
・日常的に、Googleドキュメント、スプレッドシート、スライド、ドライブを使用している

このような条件が整っていれば、一つの教室に集まるか集まらないかは問題ではなく、物理的に離れた場所にいても、授業は成立します。これまでも、天候の影響や出張などで、教室に集まることができず、「今日はリモートで」としたこともありました。

逆に、「教室に集まる意義は何か」という発想で授業を構成していたので、顔を合わせることで価値が生まれることをあえて授業に取り入れるようにしていました。

ただし、このような環境で授業を行っている日本語学校はまれだと思いますので、この授業を引き合いに出して説明しても、あまり参考にならないかもしれません。

そこで、今回は、この学校以前の日本語学校や専門学校、また、技能実習生への日本語教育などで経験したことを中心にまとめてみたいと思います。なお、私は、ICTの専門家ではないので、詳しいツールの使い方は、詳しい人にお任せして、ここでは、オンラインで授業を行うための環境設定に焦点を絞って書きたいと思います。(前置きが長すぎましたが、ここからが本題です)

学生の学習環境を検討する

一般的に日本に留学し、日本語学校に在籍している学生は、日本での滞在期間が短ければ短いほど、インターネットの環境が整っていません。オンラインでの授業が前提となっている場合、環境が整っている人しか参加しませんから、学習者のネット環境がどのような状態なのかは、あまり問題になりません。しかし、通常、教室で授業を行っており、今回のようなケースで、急遽オンラインで授業を行う必要が生じた、というケースでは、学生のネット環境が大きな問題になります。

今回、様々な情報が飛び交っていますが、この「学習者の学習環境」について書かれたものをあまり見なかったので、ここはあえて、触れておきたいと思います。
私がこれまで見てきた学習者(国内日本語学習者)のネット環境は以下のようなものでした。

・PCを所持している人が少ない
・自国からスマホを持ち込んでいる場合は、Android端末が多い
・携帯キャリアと契約をしていない人がいる
 =Wi-Fi環境にないと通話ができない
・インターネット契約をしていない人がいる
 =自宅にWi-Fi環境がない

ということで、最悪の場合、Free Wi-Fiエリアでしか通話ができない学生もいました。ポケットWi-Fiを使用している場合、ネットの状況が不安定になる場合もあります。また、携帯キャリアと契約をし、なおかつ、自宅のインターネット契約までしている学生の方が少ないと思いますので、授業で長時間、携帯端末を使うと通信容量の制限を超えてしまう可能性にも考慮する必要があります。

以上の状況から、日本語学校がオンラインで授業を行う場合、以下の点を考慮しなくてはならないと思います。

・スマホ使用を前提としたアプリ、コンテンツの提供を考える
・zoom等を使った同時間に行う一斉オンライン授業は物理的に難しい
・ネット環境が不十分な学生への対処方法を考える

オンライン授業に特化したアプリを利用した授業

オンライン授業を行うためのスマホで使えるアプリもいろいろとあります。例えば、以下のようなアプリは便利です。
Google Classroom
edmodo

問題は、これらのアプリを使うには、まず、学生がそれぞれ自分のスマホにダウンロードして、アカウント登録し、さらに特定のクラスに参加するという作業が生じることです。実際の教室で設定する機会があれば、それほど難しくありませんが、今回のように準備期間がなく、いきなりオンラインで授業をすることになった場合には、ちょっとハードルが高いです。

Web会議システムを利用した授業

上記のようなアプリを使用せずに、授業を行うには、SkypeやzoomのようなWeb会議システムを使った授業も考えられます。しかし、学生のネット環境を考えると、同時間に学生全員が参加して授業をするというのは、現実的にはかなり難しいのではないかと思います。となると、考えられるのは、一旦、時間を決めてライブで授業を行ったあと、参加できなかった学生のために、ライブ動画をアーカイブし、後からいつでもチェックできるようにするという方法です。下記が比較的実行しやすいのではないかと思いました。詳しい使い方は、いろいろ調べてみてください。ポイントだけを示します。

1.  zoomを使った場合
・40分以上使用する場合は、有料プランにアップデートする必要あり
・スマホで使用する場合、zoomアプリを事前にダウンロードしておく
・オンライン授業の様子を録画する
・録画した動画を共有する

2. YouTubeを使った場合
・YouTube liveの限定公開で動画を配信する
 ただし、ライブ配信用のアカウント登録が必要(24時間かかります)
・アーカイブされたライブ動画のURLを共有する

口頭での双方向のやり取りを重視したいのであれば、zoomがいいのではないかと思います。授業動画をライブ配信し、チャット機能で送られてくるコメントを読んで質問に答えるという形であれば、YouTubeで無料でできます。

ただし、どちらも、事前、事後にURL等を共有しなければなりません。

* * * * * *

とここまで書いて、今回のnoteの着地点が見えなくなってしまいました(笑)

ここに挙げた方法は、私もこれまで一通り試していますが、自分がやりたい授業と合わないものは、いくら優れたアプリ、システム、方法であっても、使えないことが多いのです。つまり、まずは、自分がどんな授業をしたいのかを考えることが先決ではないかと思ったからです。で、そのためにどのような環境が必要なのかを検討した上で、環境設計をしていかないと、環境ばかり整えてもあまり意味がないのではないか… という点に思い当たったからです。

その気になれば、アプリの使い方の解説記事や動画など、すぐに見つけることができます。

で、オンライン授業再考

この休校期間にやってみることとして、以下の提案をしたいと思います。

1.  まず、教師自身が使ってみたいアプリを一つ選択する
2.  これ使いたいから使えるようにしてと学生に投げる
3.  オンラインクラスにたどり着いた人からやりとりを始める

これができれば、必要なアプリを見つけ、使い方を模索する、スマホでの日本語入力に慣れるなどのスキルが身につきます。そして、これらのスキルは、これから日本で生活するための必須のスキルです。

誰か一人でも連絡が取れる学生がいれば、芋づる式に情報を広げることは可能だと思います。学生全員が参加できるまで、おそらく2週間くらいはかかるでしょう。ただし、学生にとっても、教師にとっても、大きな学びになると思います。

ここで教師がやるべきことは、誰が参加できて、誰ができていないのかをチェックすることです。

参加できない人に対しては「⚪︎⚪︎さん、参加できてないね」と学生に投げかければ、学生同士で教えあったりして、自分で工夫したりして、なんとかするでしょう。学生と一緒にいろいろと試しながら、教師も試行錯誤する。せっかくの機会なんで、学生を巻き込んで、いろいろ試してみたらいいんじゃないかと思いました。

そして、教師を含め、全員が使いこなせるようになったら、4月からは、今までと違った、おもしろい授業が展開できると思うんです。


以上、これまでの試行錯誤をもとに、ICT化に向けた提案について書いてみました。何か、新しい発見があったら、ぜひコメント欄にでも共有してください。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました!

共感していただけてうれしいです。未来の言語教育のために、何ができるかを考え、行動していきたいと思います。ありがとうございます!