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13_アンケート調査との格闘 【山の日本語学校物語】

これは、とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。ITエンジニアの専門日本語教育、プロジェクト型のカリキュラム、地域との連携などなど、新たな言語教育の実践とその可能性について、当時の記録をもとに綴っていきます。最後までお付き合いください。

この連載を始めるに至った経緯については、「00_はじめに」をお読みください。

12回では、教師が発案し、カリキュラムに初めから組み込まれていたタスク「インタビュー調査」について書きました。教師が思い描いたように授業を進めようと思うと、細かいステップが必要になります。しかし、細く刻めば刻むほど、「教師の思い描いているように学生を誘導する」ことになり、自由度は失われます。プロジェクトに慣れていない学生をどのように導いていけばいいのか、その加減が非常に難しいと感じました。

そこで、今回は、教師側が全く意図せず、学生自ら企画し、実行した「アンケート調査」を中心に描いてみたいと思います。

アンケート調査の概要

この「アンケート調査」とは、10でも書いていますが、「みどり町(仮名)」について知ることを目的に学生自身が作成したものです。地域に暮らす人が「みどり町」をどのように捉えているのかを知りたいという発想から生まれたものです。このアンケートの方向性や質問内容について、教師側からは一切指示を出していません。多くの人にアンケートに答えてもらいたいという思いから、自分たちが出店したブースに、料理やゲームなどを用意し、訪れた人たちにアンケートを書いてもらうというアイデアが生まれました。当日は、大雨で思うようにブースの運営ができなかったものの、最終的に57枚のアンケートを入手しました。みどり町の人口が5000人程度でしたから、人口の約1%のデータを入手したことになります。

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