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18_第4ステージの概要 【山の日本語学校物語】

これは、とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。ITエンジニアの専門日本語教育、プロジェクト型のカリキュラム、地域との連携などなど、新たな言語教育の実践とその可能性について、当時の記録をもとに綴っていきます。最後までお付き合いください。

この連載を始めるに至った経緯については、「00_はじめに」をお読みください。

16回17回では、第3ステージで行った「ケーススタディ」について書きました。16回では、教師から「やさしい日本語」に書き下ろして教材化した一つの事例を提示し、それを日本語で読んで検討するというケーススタディについて紹介しました。これは、他の事例を検討することによって、プロジェクト全体の流れを把握しようとしたのが目的です。そして、17回では、その事例を受けて、学生それぞれが探した事例をプレゼンするというケーススタディについて書きました。これは、自分たちのプロジェクトのアイデアの幅を広げるということが目的でしたが、その目的はなかなか達成されず、その原因についてあれこれ考察しました。

今回(18回)からは、いよいよ第4ステージに入ります。10月16日から始まった1stプロジェクトも、11月最終週に入り、12月12日は、ゲストを招いてのプレゼンテーションを予定していました。これまでの様々な活動を通して考えてきたアイデアをまとめて、プレゼンできるようにするのが、この第4ステージの目標です。

1stプロジェクトでは、3つのチームで活動をしていましたが、これまでみてきたように、この3つのチームはプロジェクトの捉え方や方向性など、それぞれに異なる考え方を持っていました。そこで、この第4ステージについては、チームごとに活動の様子を振り返ってみたいと思います。

今回の第18回では、この第4ステージをどのように進めたのか、全体の流れについて説明します。その上で、19回では「木山川チーム」、20回では「蜘蛛の巣チーム」、21回では「笑笑チーム」について書きたいと思います。さらに、22回では、プレゼンテーションの当日の様子について書きたいと思います。

第4ステージのスケジュール

ケーススタディが終わり、第4ステージに突入したのが、11月28日でした。そして、プレゼンテーションの本番が、12月12日です。わずか2週間になりますが、この間、以下のようなスケジュールで進めました。

11/28(火)アイデアの検討
11/29(水)プロトタイプ版作成
12/1(金)プロトタイプ検討会
12/4(月)プロトタイプ再検討
12/5(火)プレゼンテーションの準備
12/6(水)プレゼンテーションのプレ発表会
12/7(木)プレ発表会のフィードバック
12/8(金)プレゼンの再検討
12/11(月)プレゼンテーション練習
12/12(火)プレゼンテーション本番

相変わらず、無茶振りとも言えるスケジュールです。上記では、「プロトタイプ」という言葉を使っていますが、実際に、動くようなものではなく、アイデアの全体像が視覚的にわかるようなものを意味しています。具体的には、サービス内容をスライドにまとめたものを意味しています。

(この「プロトタイプ」という言葉を当時は、非常に曖昧に使っていました。プロジェクトを何回も回しながら、この曖昧さに気づき、後にこの「プロトタイプ」の種類を段階的に定義して示すように改良しています)

チームごとスライドにまとめたものをもとに、アウトプットを行い、アウトプットされたアイデアについて検討することを何回か繰り返して、徐々にアイデアを固めていきました。

プレゼンテーションの日を、12月12日に設定していますが、これはプロジェクト開始時に決まっていたスケジュールではありません。このとき、私は「調査発表会」での様子を見て、プレゼンテーションの場を設定してしまっていいのだろうかという迷いがありました。前述したような短期間でアイデアをまとめた場合、一般聴衆を前に、プレゼンテーションをするだけのクオリティに仕上げることができるのかという不安があったからです。

そんな私の不安が判断を鈍らせ、日程調整に手間取っていました。第3ステージが終わり、第4ステージのスケジュールを提示した時点で、まだ、「12月11日〜15日の間で日程を調整しています」という伝え方をしていました。しかし、1stプロジェクトを始めるとき、当該期間の評価は、ITエンジニア、地域の方、日本語教師がそれぞれの視点で行うと宣言してしまったので、それらの関係者を招待する必要があります。「やる」といってしまったからには、もうやるしかありません。そこで、日本語学校の運営会社の役員をはじめ、ITエンジニアや町の関係者、また、担当教師以外の日本語教師に声をかけました。これら関係者の日程調整にかなり時間もかかりました。最終的に12月12日で調整し、第4ステージのスケジュールを学生と共有する段階で、ようやく日程が確定しました。

具体的な授業内容

このようなもう誰にも止められない状況で行った授業内容について、もう少し具体的に説明します。

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