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【第7回】関連づけが学習意欲を高める②「学習意欲を高める目標設定に関する悩み」と「映像による動機づけ」

~看護教員から、教育学者へ~

 第1回の「授業で学生の注意(関心)を引き出すには?」が終わり、私たちに変化が生じているようです。
 例えば、授業の準備をしているときに意識しなくても「この授業で何を教えるのか」「何をする授業なのか」「何を学生に分かってもらいたいのか」と頭に思い浮かべながら授業のタイトルを考えているのです(よいテーマであるかどうかは別ですが)。このような些細な自分たちの変化に驚きつつ、このように考え続ければ、いつか先生がつけてくださったような、学生にとって分かりやすい授業のタイトルがつけられるようになれるかもしれない。そんな期待をもちながら、今後も頑張っていきたいと思います。
 今回の原稿も梅澤が書いていきます。「目標と関連づける」への質問がたくさんあります。

1.これでいいのか? 授業の目標!

 看護専門学校の教員になるための要件はいくつかあるのですが、その1つに“看護教員養成講習会受講”があります。10か月以上の研修を受けるのですが、そこで<授業の冒頭には本時の目標を説明して、授業の終わりにはその目標を振り返ること>はとても重要だと学んできました。なので、先生がおっしゃる「目標と関連づける」はすごくよくわかりますし、それを意識して授業をしているつもりです。しかし、実際には、「目標と関連づける」以前に、適切な目標を設定することはなかなか難しいことだと感じています。
例えば、過去に行った母性看護学の講義に「新生児の特徴」があります(学生の興味関心をひくテーマとはいえず反省してます)。その講義の目標の1つに「新生児の生理的変化や身体的特徴が理解できる」という目標をあげていたことがあります。しかしこれでは、学生が何を学ぶのかは分かりにくいと思います。そこで今回、この目標の一部である「新生児の生理的変化」についてとりあげて考え直してみました。主な「新生児の生理的変化」は2つで、1つは“生理的体重減少”、もう1つは“生理的黄疸”です。これらについて、①生理的変化が生じる理由、②日齢に応じた生理的変化の特徴、③生理的範囲を逸脱した場合の新生児への影響、この3つを学生に理解してもらいたいと考えています。特に②③については頭に入っていないと、新生児の観察ができません。このような観点から、次のように目標を変更してみたらどうかと考えました(図)。

第2回その2の図

図 母性看護の講義目標の変更過程 目標設定の仕方に関して、アドバイスをお願いします。

2.学生に目標を考えさせるという発想が欠けていた

 学生が自ら目標を立てることは、学ぶ意欲につながると思います。それだけではなく、日進月歩の世界である医療・看護において、看護師は生涯学習することが求められます。自ら適切な目標を掲げて学び続けることはプロとしての責務です。学生のうちに自分で適切な目標を設定できるようになって欲しいと思っています。そのため教員は、学生が目標を考える機会を設けることが必要だと考えます。
 しかし、講義形式の授業では、学生に授業の目標を考えさせたことがあまりありません。そもそも講義形式の授業において、学生に目標を考えさせるという発想がもてていませんでした。講義は「教員が設定した目標を学生に説明し、終了時に目標が達成したかを学生に確認する」このスタイルが当たり前のようになっていました。講義形式の授業において学生が目標を考えるということは、是非とも実行していきたいので、そのためのヒントをいただけないでしょうか。西野先生は、どのようなタイミングで学生に目標を考えるように伝えていますか?その際、何か工夫をしていることはありますか?多くの学生が考えた目標に対してどのようにフィードバックしていますか?具体例をあげて教えていただけると嬉しいです。

3.学生自身に適切な目標を設定できるようになって欲しい

 講義形式の授業では、学生に目標を考えさせる機会はもてていませんでしたが、演習や臨地実習では、学生自身に目標を立てさせることは多いです。看護学校の授業は3分の1が臨地実習であり、日々の実習目標は学生自身で考えてもらっていますので、学生自身が目標を設定する機会が非常に多いと言えます。
しかし、適切な目標設定ができない学生はしばしばいます。目標が抽象的すぎる、目標が高すぎる(あるいは低すぎる)、そもそも今日の目標とすべき事柄からズレている等……。最初から適切な目標をすべての学生が設定できるとは思っていません。そこには教員の支援が必要だと考えています。そこで質問です。適切な目標設定ができない学生には、どのようにアドバイスをするとよいでしょうか。

4.本当に授業目標は達成したのか?

 本日の授業の到達目標が達成されたかを確認する方法はいくつかあると思います。例えば、リフレクションペーパーなどで目標到達状況を記載してもらうという方法があります。リフレクションペーパーに「今日の授業で学んだこと」というような項目を設けておくと、学生は「〇〇について理解できた」というように目標達成したと解釈できるような内容が記載されています。しかし、単位認定試験では正答が導き出せないということがあります。これは、目標設定が悪いのか、授業の内容自体が悪いのか、到達目標の確認の仕方が悪いのか、試験の出題方法が悪いのか、試験の難易度が高いのか・・・。「評価」に課題があるのだとは思っています。目標設定と評価について、アドバイスをいただけると嬉しいです。

5.無料動画を自己学習に活用した効果

 「学生の動機と学習を結びつける」のに、動画教材は本当に効果的だと感じています。
 最近のあるエピソードを紹介します。看護学生にとって、解剖生理学の知識を身につけていることはとても重要ですが難しい科目の1つです。学生Aさんも同様で、一所懸命まじめに勉強しているのですが、結果がついてこず、模擬試験では下位グループに属していました。そんなAさんが3年生の秋頃、「YouTubeで配信されている脳神経系の動画を何十回も繰り返し見ていたら、人に説明できるくらい理解できるようになった」と言っていました。その後もその動画を繰り返し見続けたAさんは、年末には中間グループに入るくらいの成績に上がってきました。
 もちろんYouTubeの効果だけで成績が上がったわけではないと思いますが、動機づけになったことは間違いないと思います。そこで、AさんにYouTubeで学習し続けられたのはなぜか聞いてみました。いちばんは “簡便性”ということでした。本を読んで勉強するにも本をもっていなければ読むことはできない。学校のDVD動画も同様で、借りないと手元に置けないし、再生機やパソコンがなければ見ることができない。その点、スマートフォンは若者にとって必携で、いつでもどこでも知りたいものを検索できるし、YouTubeもすぐに見ることができる。そういう便利さがよいのだそうです。また、アニメーション動画などを使って説明してくれるので、頭に入りやすいし、何より“無料”だから、ということでした。
 当校の看護教員は40~60歳がほとんどであり、勉強はテキストや参考書、辞書を引いてするものと認識している年代です。信頼できるかどうかわからないYouTubeなどの無料動画を見るのは、身近な学習方法ではない年代でもあります。しかし、Aさんの変化を見ると、これからは学生のニーズに応じて柔軟に新しいものをどんどん取り入れていかなければならないのだと実感しました。

6.授業での動画教材の活用方法

 上記のように、動画教材は学生の理解を助けるために有効だと感じています。例えば、心筋梗塞という病気は知っていても、心筋梗塞を発症したばかりの患者さんを学生は見たことがありません。そこで、心筋梗塞を発症した急性期患者の看護を学ばせるために、役者さんが演じる心筋梗塞の患者さんの発症前の生活や発症時の様子、急性期から回復期にある患者さんの入院中の様子などを、一連の動画としてまとめてある20分程度のDVD(有料教材)を授業で学生に見せ、イメージがもてるようにしています。しかし、見ただけでは学生が理解できず、なかには眠くなってしまう学生もいます。
 動画教材という同じくくりであっても、先程Aさんが自発的に見たYouTubeとは違い、授業中に流す映像は、学生にとっては「見せられている映像」なのかもしれません。目標達成に向けて、授業中に動画教材をどのように使うか、何かヒントになる有効な方法があれば教えてください。

 答えに困るような質問をたくさんしているのではないかと思いますが、西野先生どうぞよろしくお願いします。

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