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【第13回】自信を持てる授業をつくる③適切に自信を伸ばしていく

~教育学者から看護教員へ~

フォームのテスト機能を活用する

 酒井先生、青葉先生のご実践は、まさに「自信」につながる工夫を織り込めるものでした。なんとなく小テストを行うことと、目的をもって小テストを行うのでは、学生の小テストに向き合う態度も違ってきます。

 小テストを行うにあたって、「関連づけが学習意欲を高める⑤」でもご紹介した、Googleフォームや、Microsoft FormsといったWEBツールのテスト機能を使うこともお勧めです。酒井先生の場合は、授業時間が余らなかった時にも、授業後の課題として学生に課してもよいでしょう。次の授業の最初に、その場でスマートフォンから回答してもらえば復習にもつなげられます。青葉先生の場合は、学習範囲の問題をフォームに搭載しておき、「その中で正答率が低い問題をアレンジして中間テストで出しますよ。間違えてしまった問題は、なぜ間違えたのか分析をして、正答できるように勉強しておけば、確実に中間テストで良い点が取れますよ」とアナウンスしておけば、学生は自主学習し、勉強した学生ほど良い点を取り、自信を持つことができるでしょう。

 小テスト、中間テスト、期末テストを連動させることができれば、まさにヒント7「成功の条件を示す」、ヒント8「成功する機会を与える」、ヒント9「努力による成功を促す」を実行していくことにつながります。

できない学生を伸ばすコツ

 板倉先生の「臨地実習で考えを表現できない」学生の指導法についてです。先生方もお感じになっているとおり、臨地実習に至るまでの演習や講義の中で、その学生(Aさん)のアセスメント能力や看護計画の立案能力を実習に必要なレベルまで高められていたかどうかを確認し、もしそうでないならば今後同じようなことが起こらないようにするために演習や講義をどのように工夫できそうかを考えることは重要ですね。

 さて、お悩みはAさんを実習中どのように指導するかでした。もし実習の前提となる演習科目の中で、ペーパーペイシェントを用いたアセスメントや計画立案をしているようであれば、その時のワークシートなどを持ってきてもらう、あるいはその時の模範例を再度示しながら解説するなどして、演習で学んだことと実習での実践を結び付け、復習してもらいながら指導するというのは1つの方法です。

 また、教員が指導するのではなく、学生同士の協同学習によって状況を乗り越えようとする考え方もあります。実習の振り返りを学生同士で共有する機会や、学生が困っていることを他の学生に相談し、共に問題解決するようなディスカッションの時間を設けるといった方法です。教員のアドバイスよりも、学生のアドバイスの方が理解できたり、うまくいったりするケースもあります。

 「自信を持つどころか、失わせかねないのではないか」という不安についてですが、その学生の成長をどれだけ長期にわたって段階的に見守ることができるかどうかという点もポイントです。他の学生がレベル3(教員の助言が多少必要)からレベル4(教員の助言がなくても大丈夫)を目指しているところ、Aさんはレベル1(教員の繰り返しの助言が必要)からレベル2(教員の助言が必要)を目指しているのかもしれません。そこは割り切ってしまい、まずは確実にレベル2を達成しようという目標で指導する必要もあるかもしれません。”成功”のレベルが学生によって違うということです。しかし、レベルの程度はともかく、確実にレベルアップできたということは学生の自信につながり、ひいてはそれが学習意欲につながるのではないでしょうか。

自己評価力を高める

 ダニング-クルーガー効果という言葉を聞いたことはあるでしょうか。能力が低い学生ほど自己評価が高く、能力が高い学生ほど自己評価が低い傾向にあることが実験を通じて証明されたものです。

 学習において重要なことは、”適切な自己評価能力”を身につけることです。これは能力が高い学生、低い学生、どちらにも言えることです。適切な自己評価能力を身につけることができれば、自ら成長していくことができるようになるからです。そのためには、自己評価と客観評価のギャップを理解する必要があります。

 実際に、中間レポートをルーブリックを用いて自己評価してもらい、同じルーブリックで客観評価した結果をフィードバックし、自己評価と客観評価のギャップを具体的に把握させたところ、次の期末レポートにおける自己評価と客観評価の差は中間時のそれよりも縮まったという実証研究結果も発表されました。

 学習目標に対して、どこまでできてるのか、今後の課題は何なのかを、ルーブリックなどの具体的な基準を用いた自己評価と客観評価を突き合わせることで自覚していくことが、まさに”学び”そのものといえるのではないでしょうか。学生の自己評価力を高め、一皮むけるような経験をさせてあげたいものです。

※ARCSモデルの順番については、Sまですべて修了してからお話したいと思います。ぜひ、先生方もこの順番にどのような意味があるのかな?と考えてみてください。

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