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【第10回】関連づけが学習意欲を高める⑤学生の自律的な学習を促す

 ~教育学者から看護教員へ~

 「関連づけが学習意欲を高める」をテーマに看護専門学校の先生方とやりとりしてきました。具体的には、ヒント4「目標と関連づける」、ヒント5「動機と関連づける」、ヒント6「経験と関連づける」方法について考えてきました。

1.学生が目標を考えるということ

 ヒント4「目標と関連づける」では、教員が目標を明らかにするだけでなく、学生自身に目標を考えてもらうことの意義を理解していただきました。そして前回、「グループワークを始める前に30秒程度で目標を考えてもらう」というのは、具体的に、どのような授業で、どのような目標を考えてもらうのか?という質問をいただきました。まず、授業の種別は問いません。グループワークを積極的に行う授業であれば講義科目でも演習科目でも構いません。ただ、その科目の目標に「コミュニケーション力(協働力、討議力、グループワーク力など書き方は様々)を高める」というものが含まれていると、より効果的です。学生に、グループワークを通じて成長してほしいというメッセージをより強く打ち出せるためです。
 学生が立てる目標は以下のようなものです。

・1回以上自分から発言をする
・他者の意見を尊重する
・制限時間を気にしながら議論する
・発言が少ない人に話を振ってみる
・議論のまとめ役に挑戦する

 「なんだ、それぐらいの目標か」と思われるかもしれません。それでも、目標を意識するのとしないとでは、グループワークへの関わり方が違ってきます。普段自分ができていないけど、できるようになりたいこと。意識してやればなんとかできること、程度のレベルで目標設定してもらいます。
 目標にコミットしてもらうために、考えた目標をグループ内で1人10秒で発表してもらってから、グループワークを始めることもあります。またグループワークが終わってから、目標を達成できたかどうかや、次のグループワークで目標にしたいことなどをリフレクションシートに書いてもらい、次の授業で良いものを紹介し、次の目標設定に役立ててもらうこともしばしばです。

2.学生がいつでも、何度でも受けられるテストづくり

 今ご紹介したのは、グループワーク時の目標設定でした。「関連づけが学習意欲を高める③」でもお伝えした通り、学生に目標を立てさせられるのはグループワークの時だけではありません。日々の学習目標として、「課題や小テストで満点を取る」ということが掲げられることもあります。ここで「良い点が取れるまで何度も小テストを受けられるシステムがあるとのことですが、どのようなシステムでしょうか?」とご質問をいただきました。
 誰でも使える最もシンプルな方法の1つは、Googleフォームのテスト機能の活用です。グーグルフォームは各種申し込みやアンケートなどで活用されることが多いものですが、同じ要領でテストとして活用できるのです。すなわち、選択肢に対して正答や解説を打ち込んでおくことで、学生が回答を送信すると自動で採点、即時フィードバックがなされるという仕組みです。回答を1回に制限しなければ、何度でも回答を送信することができることから、「いつでも、何度でも受けられるテスト」といえます。
 学校や大学単位でLMS(Learning Management System)を導入しているもの中にテスト機能が内蔵されているケースもありますので、学内の詳しい方にご相談されても良いかもしれません。とりわけ医療系の高等教育機関では国家試験対策として、あるいは留年対策としてテスト機能を用いたe-learningを有効活用して成功している事例も耳にします。最近であれば、ラーニングボックスの活用して落第者を大幅に減らすことができたという話を聞きました。

3.まとめ

 今回を含めて計5回の往復書簡形式で、学習意欲を高めるための授業設計モデル「ARCSモデル」の「R(Relevance:関連性)」について考えてきました。ヒント4「目標と関連づける」、ヒント5「動機と関連づける」、ヒント6「経験と関連づける」の3つのヒントがありましたが、教員が独りよがりで考えるのではなく、学生目線で考えるということの重要性を感じ取っていただけたのではないでしょうか。
 もちろんそれは、「学生任せ」や「放任」という意味ではありません。どのような目標に方向づけるか、学生の学習ニーズを考慮しつつも正しい知識をいかに身につけられるようにするか、どのような経験といかにして結びつけるのが最適かなど、教員が考えるべきことは沢山あります。学生の自律的な学習を促すことにもつながると考えてて、関連性を意識した授業デザインを心掛けてみてください。

 いよいよ次回からシリーズ後半戦に突入します。「ARCSモデル」の「C(Confidence:自信)」について考えてまいりましょう!

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