【第11回】自信を持てる授業をつくる① 3つのヒント
~教育学者から看護教員へ~
今回から、学生の学習意欲を引き出す授業設計モデル「ARCSモデル」の「C(Confidence:自信)」に突入です。タイトルを、「自信を持てる授業をつくる」としました。
このタイトルをご覧になられた際、”主語”は誰を想像されましたか?多くの方は、”私”=”先生”を想像されたのではないでしょうか。とりわけ看護の先生方は謙虚な方が多く、「私、自分の授業に自信がないの…」という言葉をよく聞きます。特に若手の先生は、看護師としての経験ならまだしも、教師としての経験がほとんどないところから手探りで始めていきますから、自信がなくて当然ともいえます。
さて話を元に戻しますが、この連載はあくまで”学生の”ための授業設計について考えていますから、このタイトルの主語は”学生”が正解です。学生が自信を持てるような授業づくりができれば、教員もきっと自信を持てるようになりますよ。 それでは、学生が自信を持てる授業づくりの3つのヒントです。
ヒント7「成功の条件を示す」
学習における成功とは、学習目標を達成することにあります。どうすれば学習目標を達成できるのかを示すことが、成功の条件を示すことにつながり、そのことが学習意欲を高めます。
シラバス等に書かれた学習目標の多くは抽象度が高く、何をもって達成できたかどうかがイメージできないことが多いものです。成功の条件を学生に理解してもらう一番の方法は、評価基準を示すことです。
たとえば、「~を理解する」という目標であれば、一番シンプルな方法は過去問を見せてしまうということです。どのような問題が解ければ理解したことになるのか、はっきりとわかります。「~ができる」という達成目標であれば、チェックリストを示すと効果的です。「~を高める」という向上目標であれば、ルーブリックがわかりやすいでしょう。
ヒント8「成功する機会を与える」
成功する機会を与えるためには、学習目標を細分化し、小さな達成経験を得られるようにすることが有効です。一言でいうならば、練習する機会を与えるということでもあります。
たとえば、「~を理解する」という目標に対して、期末試験一発勝負では、成功する機会を与えているとは言えません。毎回の授業後に小テストを与えたり、練習問題を出して解けるようにするなどの工夫が学習意欲を高めます。
「~ができる」という達成目標でも同じです。学生同士でチェックリストを用いてお互いにできているかどうか確認し合うような機会をつくることで、小さな成功を重ねられます。
「~を高める」という向上目標であれば、ルーブリックを用いて形成的評価を行い、何が高まっていて、何が高まっていないかを確認するようにできます。
ヒント9「努力による成功を促す」
自分の努力の結果、成功できた!と思えることが自信につながります。ヒント8のように成功の機会を与えても、その機会をものにできなければ意味がありません。
例えば小テストを出したとしても、その試験の結果がフィードバックされなければ改善のしようがありません。そして再挑戦する機会がなければ改善できたかどうかを知ることもできません。
私は授業の最初に前回の授業の復習小テストを行うようにしています。その結果も即時フィードバックされ、解説も授業中に行ってしまいます。学生は毎回復習テストがあるとわかっているので、勉強してきます。否、勉強してくるようになります。というのも、最初は勉強してこないので、当然、得点が悪いのです。「なぜ得点が悪かったのか?」と振り返ると、「勉強しなかったから」と気づくので、次は勉強してきます。すると得点が前回より高まるので、「勉強したから得点が伸びた」と思え、これが自信という学習意欲につながります。
さらに私の授業では毎回の復習小テストは多肢選択問題で出している一方、中間テストは記述式問題を出しています。すると復習小テストでは得点が取れていたのに、中間テストでは得点がとれないという学生が続出します。それも「なぜ?」と考えさせます。とりわけ得点が良かった学生に、どうやって勉強したのかを尋ねて全体に共有するようにします。その学生は「ノートに学んだことを書き出して勉強していた」と答えました。期末試験でも同じ形式で出題すると伝えたところ、ほとんどの学生が「書いて勉強する」ということと「問題を想定する」ということをして臨みました。ある学生は、「鉛筆から煙が出るぐらい書いて勉強した」と語ってくれました。結果的に多くの学生が中間試験よりも期末試験に良い結果を残してくれました。
知識理解だけでなく、技能の修得や、能力の向上も同じです。最初は上手くできなかったけれど、努力した結果できるようになった!と思えるようになる授業設計を是非考えてみてください。
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