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【第15回】自信を持てる授業をつくる⑤「自信」から「満足感」へ

~教育学者から看護教員へ~

 ここまで、学生の学習意欲を引き出す授業設計モデル「ARCSモデル」の「C(Confidence:自信)」について、扱ってきました。

 ヒント7「成功の条件を示す」…評価基準を示す
 ヒント8「成功する機会を与える」…練習する機会を与える
 ヒント9「努力による成功を促す」…結果を次につなげる
 

 青葉先生が実践されているプレ・ポストテストの後の振り返りは、まさにヒント9の実践ですね。さらにいえば、プレテスト後に正解を自分たちで調べながら考えるという学習法は、ヒント2「探求心を喚起する」にもつながります。ポストテスト後に、自分が担当した患者さんに当てはめて解説をしてもらうことは、ヒント6「経験と関連付ける」にもつながっています。

 梅澤先生の「患者さんがかかとを踏んだ状態で歩いてしまう」という問題について、すぐに直接的な指導をするのではなく、学生自身に考え方のアドバイスを与える(友達に相談してみる)に留めたことも、ヒント9の実践といえます。努力による成功とは、学生自身が考え行動した結果得られる成功といえますから、教員には忍耐が求められます。今回の事例であれば、今回の成功が何によって得られたか、つまりどのような努力が成功に結び付いたのかを学生が理解できていれば、成功の再現性が高まります。成功を褒めつつ、成功要因について発問し、仲間に相談したことや、患者さんと一緒に考えたこと、原因を考えたこと等、これからの実践でも大切にした方がよいことについて学生自身が言語化できれば、さらに良いですね。 

 対象となる患者さんに対する技術の実施が困難な学生に、基本的な技術はできているという自信を持たせる指導は、ヒント7ヒント8につながる実践でした。つまり、成功の条件のうち半分は達成できているのだということを自覚でき(ヒント7)、かつ教員という練習相手を得ることによって基本の確認ができた(ヒント8)といえます。

 小テストの実施も楽しみです。お考えいただいている通り、既存のシステムを活用できるならば、それに越したことはありません。あれこれと新しいツールを導入すると、学生も教員も混乱してしまうからです。自主学習ツールと授業学習ツールが結びつけば、授業を通じて自主学習を推進することにもつながりそうです。

 プレ・ポストテストの設問を調整し、学生の成長を可視化できるようなれば、次回お伝えする「満足感」を高めることに繋がり、さらに学習意欲を高められるでしょう。個別にフィードバックすることの効果はもちろんですが、「平均点が●点あがりました!」「落第者がいなくなりました!」「高得点者の割合が●%増加しました!」など、クラス全体での成績向上をフィードバックすると、クラス全体の雰囲気が良くなり、かつ、みんなで成長していこう!という一体感や学び合いの雰囲気をつくることにもつながるでしょう。

 いよいよ次回から最終章、ARCSモデルの最後となる「S:Satisfaction(満足感)」です。お楽しみに!


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