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【第14回】自信を持てる授業をつくる④学生の学ぶ力を活用し、スモールステップが踏めるようにかかわりたい

~看護教員から教育学者へ~

 学生が自信を持てるような授業をつくるというテーマでお話が進んでいますが、前回の西野先生の記事の冒頭にあった「酒井先生、青葉先生の実践はまさに『自信』につながる工夫を織り込めるものでした」というコメントは、私たち教員メンバーに自信を与えてくれています。学生にもこういう感覚をもたせられるように意見交換したことを、今回も梅澤が書いていきます。

1.学生同士で学び合う力を活用する

①「テストの点数が悪かった」を「解けなかった問題から学べた」という認識に変える取り組み

 看護専門学校では、学校内で行う講義や演習以外に、病院などの現場で行う臨地実習がカリキュラムの3分の1を占めています。成人看護学実習や老年看護学実習など、2年生の1月頃から3年生の12月頃までの期間に10科目の臨地実習が行われます。当校の場合、1科目の実習は12日間で行われていますが、どの実習科目も開始前にプレテストを、終了時にポストテストを実施しています。
 青葉先生は、実習前後のプレテストやポストテストを実施したあとの答え合わせの際、教員が正解を伝えるのではなく、学生が正解や何故間違えたのかを分担して調べて、その結果を教え合う機会を設けています。また、ポストテストの場合、実習で自分が担当した患者さんに当てはめて解説をしてもらっています。この取り組みは、テストの点数が良かったが悪かったで終わらせるのではなく、解けなかった問題を通して、自分たちの力で学べたという自信につながるのではないかと考えました。

②学生同士で患者さんの看護を考え、成果を出す

 教員のアドバイスよりも学生のアドバイスの方が上手くいくケースがあると西野先生はおっしゃっていましたが、本当にその通りだとつい最近実感する出来事がありました。
 臨地実習で受け持たせていただいた患者さんは、筋力低下などの理由で転びやすい状況がありリハビリテーションを受けていました。その患者さんは、トイレに行くときなどに、靴をしっかり履かず、かかとを踏んで移動していました。学生は「靴をしっかり履いていないところを見つけたら注意する」という計画を立てたのですが、それでは根本的な解決にはなりません。そこで、靴をしっかり履いていないところを発見できたら注意できるが、発見できなければ転んでしまうかもしれないので、他の方法がないか、学生間で意見交換をしてみてはどうかと投げかけてみました。すると早速学生は同じグループメンバーに声をかけており、メンバーの「何でちゃんと靴をはかないんだろうね」という一言から話が広がり、次の日には、「なぜ靴をしっかり履かずにトイレに行ってしまうのか理由を聞き、安全にトイレに歩いていく方法を患者さんと一緒に考える」という計画を立ててきました。教員が提案することは簡単ですが、学生同士で学び合える力を信じていくことの大切さを改めて実感しました。ちなみに、その計画を実施した後、患者さんがかかとを踏んだ状態で歩いている姿は発見されていません。学生同士で考えた結果が患者さんの安全を守ることにつながったことは、教員に教えてもらって実施した場合よりもはるかに自信につながっていくのだろうと思いました。

2.学生のレディネスに応じて、スモールステップでかかわる

 看護専門学校の3年生ともなれば、基本的な看護技術を実施できる力を身につけている必要があります。さらに、実習目標を達成するためには、患者さんに合わせた看護技術を実施することが求められます。しかし、緊張感が強く、手先が不器用な学生は、実際の患者さんに対して実施できず、頭が真っ白になって立ちつくしてしまうということがあります。そこで酒井先生は、学生のレディネスに応じて「この患者さんに実施する技術」ではなく、まずはスモールステップとして「基本的な技術」ができることを確認するために、教員に実施してみてもらうことにしました。その結果、教員への基本的な技術は実施でき、その学生は基本的なことはできるんだという自信をもつことができ、どうやれば患者さんにもできるのかを考える次のステップに進むことができました。
 3年生なので基本的な技術は身につけている前提ではありますが、患者さんに提供するための前段階の技術は実施できるという自信をもたせるようにスモールステップでかかわることで、応用編となる患者さんへの実施という次のステップにつながっていくということを実感したケースでした。

3.小テストの実施方法の改善

 小テストについては何度も話題になっていますが、今回は当校で実際に取り入れられそうなことを考えたので書いていきます。

①Webツールのテスト機能を使ってみる

 当校では、教育プラットフォームとして「Classi(クラッシー)」を採用しています。Classiにもテスト機能がありますが、今は授業外の学習支援として使用していることがほとんどです。これを使って授業開始前に小テストを作成しておけば、授業中に時間が余らなかった場合でも、授業終了後に自己学習として小テストに取り組んでもらったり、次の授業の冒頭に復習として取り組んでもらったりすることも可能になると思いました。早速取り入れたいと思います。

②テストの結果が向上していることをデータで示す

 冒頭に述べたように、当校では実習前にプレテストを、そして実習後にポストテストを実施しています。しかし今は、プレテストとポストテストに出題する学習内容が異なっているため、実習をした後にどれだけ成長したのか、点数をもとに比較がしにくい状況になっています。学生が成長を実感して自信がもてるようになるためには、プレテストとポストテストを同じ問題にする、あるいは同じ内容でレベルを上げたポストテストをつくる、そして点数の変化を客観的なデータとしてフィードバックすることで、点数が伸びた学生にとっては自信につながっていくのではないかと考えました。この考え方をすべての実習科目で取り入れられるようにしたいです。ちなみに、最近少しずつ学校全体で検討を始めています。


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