見出し画像

又吉直樹さんの物語のつくりかた

しずる村上さんがインタビュアー。
又吉直樹さんの創作に迫った。
#クリエイターフェス
イベントレポート公開。

(超抜粋)

恋愛をテーマに書くとしたら…
季節は秋
→マンション
→ベランダが気にいって住んだ
→一人暮らし
→お気に入りのベランダで
 ひとりでコーヒー飲んでいる。
 風が気持ちいい。
→…と、下からめっちゃ煙が上がってくる
→どうやらサンマ焼いてるな…
→これじゃ自分が思ってた理想の生活にならないと 
 文句を言いに行く…
→行ってみたらその人がすごくいい感じの人で…
→文句言えなくなって
→サンマのお返し何持って行こうとか…

こんなふうにテーマを絞り込んでいく 。
広がらないと思ったら
さんまを別の料理に変えるとか… 

案は捨て切らない。
ボツネタを回収して、
他の話とドッキングさせることもある。

書きたいなと思ったテーマをメモしておいて
それにまつわる情報を集めていって
段々そのメモを太くしていって。
ある程度溜まったら、
すごくそれを形にしたくなるから…
長期的な仕事はそうやっていってて、
すぐ作らなあかんもんは、
そのとき見えてるもんで作る。
今見えてる環境で書く。
例えばこういう仕事(noteイベント)をした帰り。というシチュエーションで書く。

小学1年生のときに書いた作文が
先生にめっちゃ褒められた。
おもしろいこと書いたからじゃなくて、
何か事象を書いた後に、
きょう誰々と話しました。
恥ずかしかったです。
何々をしました。
恥ずかしかったです。
恥ずかしかったですが
20回くらい出てくる。
そういう構成にしようと思ったんじゃなくて、
本当にそう思ったから書いた。
基本、(自分は)恥ずかしい。
恥ずかしかったことを
いつまでも覚えている。
恥はふせんのように覚えてる。
怒りとかもあるが、
自分が物を作るときに最初にポイントにするのは「恥」。
怒りは客観的に見れない。

物語は書き手の知っていることや
感覚をすべて披露する場所じゃない。
俺はこんなことを知ってるんだとか、
これだけアップデートされた自分を見てくれ、
という場ではない。

ぶっ飛んだものを作りながら礼儀正しく、
大人としてちゃんとしてる人を見ると
それが一番変人に見える

自分の本が好き。
ベッドサイドに、
自分の本を置いて読んでいる。

(自由律俳句のコーナーで投稿された76作品・抜粋)
・顔の浮かばぬ名刺を捨てる
・作家は日常のすべてがネタ
・鼻毛で鼻がムズムズ
・今日も職場でひとり
・今日も家でひとり
・無愛想な対応に陽気な保留音
・マクドにて肩に100ダメージをくらった
・ひとり仕事しながら耳は聴いている
・照らすパソコンモニターの光は作家志望の私を照らす創作後ころ
・何度上げてもかかとから外れるくるぶしソックス
・一年経って新米が古米
・ひとりであろうが賑やか
・満員電車椅子取りゲーム
・前向きに後ろ向く
・寄り道せずに帰れない
・脳内にはひとつ 手元にはふたつのドーナツ
・意外と同じ思考で安心
・並び直したレジが新人
・夏服と冬服に挟まれる秋服
・もう少し半袖で過ごしていたい
・出遅れた衣替え
・勝手に律を不自由と決めつけられた俳句の立場
・金木犀の香りが好きと言ってみたかった
・四角い箱と喋る毎日
・あれから咳をしづらい
・あれだけ足が速いと車の免許なんていらないよね
・まだ夏の顔が取れないシャツ着てゆく
・借りた鉛筆が薄い
2Bだがどうだ(又吉さん作)
・コンビニでタバコを買うとそこで働きたくなる
・迷いに迷ってこちら
迷いに迷ってネギ(又吉さん作)
→迷いに迷って捨てた(又吉さん作)
→迷いに迷って捨てて拾った(又吉さん作)

※又吉さん「迷いに迷って…みたいなのが見つかると楽しい!」
・さんまが高くてサバ
・見た目だけ秋刀魚
・賞味期限切れでもいけるはず 納豆
・水を見ているところなんて誰も見ていないのに
・お風呂入る前は眠かったのに
・又吉に会いに行きたい帰り道
・ほぼ石の地蔵を拝む
・妄想癖が酷くて食事忘れる
・からあげくんかと思ったらセミの抜け殻
・今度こそは会えると思ってた
・カーディガンみたいに都合のいい女
・このだるさがたまらんなぁ
・ずっと座り心地が悪いソファ
・勢いでしか風呂に入れない
・二次会をしたがるオカン
・パンケーキなのホットケーキなの
・パフェなのサンデーなの
・あのタイミングで泣けば良かった
・母が白髪を受け入れてた年末
・外した指輪を手に戻す
・あの夏の暑さがもう思い出せない
・迷った
・夏のホットは全然許せた
・捨て損ねたトランクス
・ココアはダマになっていい
・お風呂が沸きましたと言わなくなった
・死んでると思ったら 元気だったセミ
・借りたシャーペンの芯が薄い
・日本の秋はどこへ行った 半袖と長袖の共存
・確か春にも着ていた秋服
・ひとりだけ暑がり
・こっちから見えてるから 向こうからも見えてる
・celloがチェロだと知った日
・得意料理が「肉じゃが」って言い辛い
・告白前日 友人に恋人ができる 見知った顔
・速く動くと寒い
・密なんか味わえていない僕ははちみつが大好き
・はちみつに訪れる僕のねっとりした19の夏・恋
・私に降りかかる嫌なこと全部 作品に昇華する
・レシートの縦読みさせてあげない
・目のあったカマキリが飛びかかってくる
・何かを始めたい秋のこの頃


(視聴者からの質問)
Q:
描写が思い浮かばないときはどうしていますか?
例えばファンタジーなら?

A:
見たことあることしか書けないと思うので、
全部を書こうとしない。
例えばファンタジーの戦闘シーンなら、
倒れた敵の靴の裏のソールにフォーカスするとか。


noteのコンテンツ購入に充てさせていただきます。