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猫型ロボット55號の日記◉10月「かぼちゃのお祭り」

新品のときと気持ちは変わらないけれど、ボディの部品にそろそろガタがきている『猫型ロボット55號』(人間の年齢で55才)。そんな彼(もしかして彼女かもしれない)が30年前の10月にタイムトリップしたみたいです(ロボットとはいえ、もちろん心の中で)。今や盛り上がるのが当たり前のあのイベントも、最初は得体の知れない”存在”だったよう。今も世界のどこかで誰かの頭を悩ませながら、”何か”がそっと始まっているのかもしれません。変化はすぐに起こらない。そんなことを感じさせてくれる55號の独り言。

かぼちゃのお祭り

今から30数年前、まだ若かった猫型ロボット55號は悩んでいた。

広告宣伝物制作特化型ロボとして製造され、印刷会社のデザイン部に配属され日々経験を積んでいたある日、某有名百貨店の10月の催事広告の原稿を前に猫型ロボット55號は悩んでいた。「TRICK or TREAT お菓子かイタズラか? ハロウィン特集!」原稿にはそのような事が書かれていた。

「ハロウィン?」「トリック?オア?トリート??」

なんとなくは知っていたが、正直、有名百貨店で特集を組んで売り出すようなものなのかな??当時の55號はそんな事を考えながら悩んでいた。とにかく出来るだけ調べて制作していこう。幸いにも先方から素材として使えるイメージ写真はいただけた。

「お化けかぼちゃの写真」

ああ、なんか見たことあるぞ、ハロウィンといえば意味はよくわからないが「かぼちゃ」なんでしょ。55號が持っている数少ない知識。後はあれだ、ドイツのメタルロックバンドに「ハロウィン」ってのがいたな、参考にならないだろうけど。なるほど、起源は古代ケルトまで遡るのか、とか、日本のお盆みたいに死後の世界と繋がる季節なのか、とかとか、色々調べてみたが、結局は「子どもたちが仮装して近隣の住宅を訪ねお菓子をもらう」季節を祝うお祭り、ってことなんだな。55號は当時、そう理解したのです。

悩みながらもなんとか仕事も終わらせたが、やっぱりあの時思っていたのは…

「こんなイベント、日本で流行るわけないじゃーん」

それから30数年が経った今、社会問題になるほど日本人はハロウィンを楽しんでいた。

予想外だったのは本来ターゲットにしていた子どもたちのみならず、いや、それ以上に、大人たちがそれを受け入れていたことだ。
人間って面白いな、ハロウィン騒動を報道するテレビを見ながら猫型ロボットはそう思うのでした。

かぼちゃは煮物が一番美味しい、個人的には。

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